トレードや人的補償という形ではないが、自由契約で移籍した選手ではロペス(DeNA)が挙げられる。2013年に来日して巨人に入団し、1年目は打率3割をマークするなどの活躍を見せたが、翌年は大きく打率を落として退団。しかし移籍したDeNAでは完全にクリーンアップに定着し、2016年からは2年続けで30本塁打をクリアし、昨年は最多安打のタイトルも獲得するなど強力打線の一角を担う存在となっている。

 今シーズンも現在は故障で戦列を離れているが、既に16本塁打を放っておりタイトル争いに絡む活躍を見せている。3度のゴールデングラブ賞を獲得するなど、ファーストの守備も手堅い。巨人にとってみれば見切りが早かったと悔やまれる事例ではないだろうか。

 一方で巨人にFA以外で移籍した選手を見てみると、戦力になっている選手は少ない。過去5年間に獲得した選手と巨人入団以降の成績をまとめてみると下記のようになった。

※()は前所属球団、成績は7月2日時点。

・トレード
吉川光夫(日本ハム):21試合 4勝6敗0セーブ0ホールド
石川慎吾(日本ハム):99試合 57安打5本塁打20打点2盗塁
柿澤貴裕(楽天):一軍出場なし
乾真大(日本ハム):7試合 0勝0敗0セーブ0ホールド
矢貫俊之(日本ハム)11試合 0勝0敗0セーブ0ホールド
北篤(日本ハム):3試合 1安打0本塁打0打点0盗塁

・自由契約から獲得
クルーズ(ロッテ):90試合 80安打11本塁打40打点0盗塁
ウーゴ(ヤクルト):一軍出場なし
堂上剛裕(中日):102試合 35安打5本塁打19打点0盗塁
吉川大幾(中日):148試合 24安打0本塁打5打点8盗塁
井端弘和(中日):185試合 105安打4本塁打35打点3盗塁

 先発の一角として期待された吉川は昨年も今年も防御率5点台に沈み、石川も昨年ブレイクの兆しを見せたが今シーズンは開幕から出遅れて二軍暮らしが続いている。他では堂上、井端がそれなりの成績を残したものの既に引退しており、現在も一軍の戦力と言えるのは吉川くらいである。超一流選手はアメリカに渡り、FAで以前ほどの大物選手が獲得できなくなったことに加えてトレードも成功していないとなると、現在の巨人の低迷も当然と言えるだろう。この実情を見るだけでも、球界の盟主が復活する道のりは平坦なものではなさそうだ。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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