日本ハム・大田泰示 (c)朝日新聞社
日本ハム・大田泰示 (c)朝日新聞社

 3年連続で優勝を逃し、今年もここまで苦戦が続いている巨人。オフには野上亮磨をFA西武から獲得し、昨年のセ・リーグ本塁打王のゲレーロが加入するなど積極的な補強を行っているものの、残念ながら結果はついてきていない。その一方で一昨年巨人からトレードで日本ハムに移籍した大田泰示と公文克彦の活躍は目覚ましいものがある。

 大田は昨年キャリアハイの15本塁打を放ったが、今年はそれを上回るペースで本塁打、打点を量産し強打の2番に定着。公文も貴重な左の中継ぎとしてフル回転し、防御率1点台と見事な働きぶりを見せている。彼らのように巨大戦力である巨人を去ってから活躍を見せた選手は今までも少なくない。しかしその一方で巨人に入団してブレイクした選手は近年見当たらない。そこで改めて巨人にまつわる移籍選手についてまとめてみることにした。

 大田、公文以外で近年巨人から移籍してブレイクした選手の代表格と言えるのが一岡竜司(広島)だろう。2011年のドラフト3位で巨人に入団したが、巨人在籍中の2年間での登板機会はわずかに13試合で勝ち負けなしに終わっている。しかし二軍では抑えとして好投していたことに目をつけた広島が2013年オフに巨人にFA移籍した大竹寛の人的補償として獲得。すると移籍1年目から開幕一軍入りを果たすと、夏場に故障で離脱したものの31試合を投げて16ホールド、防御率0.58という見事な成績を残して見せたのだ。

 翌年は故障の影響で成績を落としたものの、2016年からは完全に中継ぎの一角に定着。チームの連覇にも大きく貢献し、ブルペンには欠かせない存在となっている。ちなみに大竹は移籍してから昨年までの4年間で22勝に終わっており、中継ぎとして11勝47ホールドをマークしている一岡の方がチームへの貢献度の高さでは明らかに上である。一岡にとっても広島にとっても会心の移籍と言えるだろう。

 野手で一岡に近い活躍を見せているのが市川友也(ソフトバンク)だ。プロ入りからの4年間はわずか9試合の出場で通算安打も0本だったが、2014年に金銭トレードで日本ハムに移籍するといきなり71試合に出場。その後も毎年高い盗塁阻止率をマークして2番手捕手の座を完全に確立し、チームのリーグ優勝、日本一にも貢献した。そして今年はシーズン開幕後に捕手の怪我人が続出したソフトバンクに移籍。バンデンハーク、中田賢一、摂津正の登板の時には先発マスクをかぶり、安定した守備でチームを支えている。他ではまだそこまでの戦力にはなっていないもののともにFAの人的補償で移籍した奥村展征(ヤクルト)、平良拳太郎(DeNA)なども今後の成長が楽しみな存在だ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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巨人は見切りが早い?