大塚製薬では2年前から、ポカリスエットのプロモーションにダンスを活用してきた。一昨年、昨年は動画アプリ「MixChannel」を通し、事前に公開する約1分のダンスの完コピ動画を募集。優秀作をCMで紹介してきた。「バブリーダンス」で一躍有名になった大阪・登美丘高校も参加するなど、「ポカリ=ダンス」のイメージは3年目のいま、かなり定着してきたと上野課長は語る。

 ポカリスエットはその名の通り「汗」の飲料だ。暑い日やスポーツの時だけではなく、人間が活動すれば必ず失われる水分と電解質(ナトリウムなど)を効率よく吸収できる飲料として1980年に発売され、ヒートアイランド現象などで日本の気温が上がっていくなか、水分補給のアイテムとして親しまれてきた。一方で、「熱中症対策や風邪の時など、特別な時だけに飲むものという印象が強くなりすぎてしまった」と上野課長は語る。

「特に若い消費者たちに、もっと身近な飲み物に感じてほしいという希望がありました」

 若者に、ブランドをより身近に感じてもらい、青春・挑戦・応援のメッセージを伝えたい。さまざまな企画を検討した末に選ばれたのがダンスだった。 

 なぜ、ダンスだったのか。

「最初はできないと思ったことも、努力すればできるようになる。自分の伸びしろを体感できる。まさに『自分は、きっと想像以上だ。』というコピーを感じることができるのが『ダンス』だと思います」(上野課長)

 関係者からの反応は想像以上によかった。2012年から中学でダンスが必修となり、若者の間で市民権が「思っていた以上に浸透していた」(上野課長)ことに加え、事故の影響で組み体操ができなくなり、クラスや学校全体で取り組める運動としてダンスに注目した学校関係者からの問い合わせが相次いだという。
 
 ダンスは始めるのに特別な道具も必要なく、練習すればかなりのレベルまで到達できる。それが、多くの若者の「青春したい」心に火をつけた。ダンスの振り付けは毎年少しずつレベルアップさせて参加者の「挑戦意欲」をかきたて、歌詞も夢を意識して作ったという。

「水分補給により体が整うことで、自分の力を発揮できる。『潜在能力をひき出す』というポカリスエットのコンセプトにも合っていました」(上野課長)

<キミとボクとで ぶち壊してけ 新たな世界>

 今回のダンス曲の歌詞の一節だ。大人なら気恥ずかしく思えるまっすぐな歌詞とダンスに、4000人を超える中高生たちが一直線に取り組み、ギネス世界記録に挑戦した。「さとり世代」なんて言葉でくくってはいけない、生徒たちの「潜在能力」を体感できるイベントだった。
 
 当日のギネス世界挑戦ダンスを収録した大塚製薬「ポカリスエット」のCMは、7月6日からオンエアされる。

(文・福井洋平/AERAムック教育編集部 写真・木村和敬/ブロウアップ)

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福井洋平

福井洋平

2001年朝日新聞社に入社。週刊朝日、青森総局、AERA、AERAムック教育、ジュニア編集部などを経て2023年「あさがくナビ」編集長に就任。「就活ニュースペーパー」で就活生の役に立つ情報を発信中。

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