■集団と自己の成功を重ね合わせる

 チームで戦う。組織で生きる。自己顕示欲が強いと見られがちな本田だが、このロシアワールドカップで見せているのは、また一味違った彼の哲学だ。

「みんなで一つのものを作り上げることが、めちゃくちゃ好き」

 その言葉を地で行く姿である。

 大会前はプレーに精彩を欠いた本田は、ワールドカップに入り覚醒する。初戦のコロンビア戦。後半に途中出場すると、大迫勇也の決勝弾をコーナーキックからアシストした。さらに2戦目のセネガル戦。チームが1-2のビハインドで苦境に陥る中、日本を救い出す値千金の同点ゴールを左足で奪った。2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会に続く、3大会連続ゴール。不調や批判や、ありとあらゆるネガティブな要素がまとわりつきながらも、世界の耳目が集まるこの大一番で期待に応え、周囲を黙らせる結果を出した。

 そして迎える、決勝トーナメント。ここからはもしかしたら、仲間意識に加え、彼本来の「成り上がり」意識が強く表に出てくるのかもしれない。厳しいトーナメントを、世界では格下の日本が勝ち抜いていく。それは「成り上がり」以外の何物でもない。

「大切なのは、次に進むこと。これは単なるチャレンジではなく、楽しみながら、遊び心を持ちながらの未知のチャレンジがベルギー戦では求められると思う」

 楽しむ。それは、日本を勝たせ、世界の視線を振り向かせ、そしてチームだけでなく自分の存在価値をも知らしめること。

 集団と自己の成功を、重ね合わせる――。

 本田の脳内で描かれている大きな目標を、地に足をつけながらも一人でも多くの選手が同じく描くことができれば、日本はベスト16の壁を乗り越えられるのかもしれない。

 いまだ到達していない世界へ。人間としての哲学をこのワールドカップにぶつける本田圭佑が、何よりも日本の仲間たちと辿り着きたい場所である。(文・西川結城)