■穴見議員の暴言騒動も東京都条例の報道も極めて抑制的

 自民党の魔の3回生、衆議院議員の穴見陽一氏が、6月15日の厚生労働委員会で、参考人として肺がん患者が意見を述べている際に「いい加減にしろ」とヤジを飛ばす事件があった。この暴言は言語道断のものだが、穴見議員は、ファミレス「ジョイフル」の創業者の長男で、今も代表取締役を務めている。まさに、利権の構造の中心にいるような人物だ。この暴言は、本来であれば、大きな問題になりそうなものだが、テレビでのこの扱いは通常のスキャンダルに比べて非常に小さなものだった。

 また、6月26日には、希望の党と日本維新の会が規制対象の例外を施設面積30平方メートル以下の既存のバーやスナック、居酒屋などに限るなどとする対案を参議院に提出した時も、新聞の報道は、極めて小さく、テレビではほとんど放送されなかった。

 さらに、東京都は、6月27日に安倍法案をはるかに上回る厳しい規制を導入する条例を可決・成立させたが、その報道も非常に抑制的だった。東京都の条例は、規制対象の例外条件から面積要件を外したのが特色だ。このため、どんなに小さい店でも例外にはならない。唯一例外を認めるのは、従業員が一人もいない店ということになっている。これは、人に着目した基準であり、従業員という弱い立場にある者を守るという考え方だから、「人にやさしい」「先進国」に一歩近づく考え方である。実は、維新・希望の法案でも、従業員がいる場合は、その従業員全員の同意を例外の要件としている。これも企業目線ではなく人に着目した姿勢として評価できる。

 これに対して、安倍法案は、あくまでも、中小企業は大変だからという「企業の論理」で例外を決めているので、「人より企業」という古い途上国体質が残された法案だと言える。

■野党は「完全禁煙」を提案して国民の信頼を取り戻せ

 ところで、日本では禁煙規制の例外をどこまで認めるかという点に議論が集中しているが、これは、世界標準から見ると周回遅れの議論であることもあまり報道されていない。政府法案も東京都条例も維新・希望案もいずれも、かりに規制対象になったとしても、屋内に喫煙室を設ければ、そこでの喫煙が可能だ。屋内での完全禁煙は、最初から実行不可能という前提で議論の対象から外されているのだ。

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このままでは世界に恥を…