■日本の攻撃で有効なのは……

 「クロスの対応力」についてはボールの軌道を完璧に読んだ動きから、通常ならDFが戻りながらクリアせざるを得ないようなボールでもキャッチするか、それができなければ相手FWに拾われないところに大きくクリアする。

 「至近距離の強さ」はまさにイングランド戦でラッシュフォードのシュートを指先で弾いたシーンに象徴されるように、シューターに対して詰め方が的確で、しかもノーステップでシュートに届く範囲が広いため、相手FWが至近距離でクルトワを破るのはかなり難しい。唯一の弱点と見られた脇下もかなり克服してきており、1対1に近い状況でも相手は確率の低いシュートを打たされるような形勢になる。

 「枠を外させる能力」は「至近距離の強さ」にも関連するが、恵まれたリーチと絶妙なポジショニングでシュートコースを切るため、シューターはおのずと難しいコースを選択せざるを得なくなるのだ。ベルギー戦のイングランドも13本のシュートのうち枠内は1本だけだったが、普通なら枠内には打てそうなシーンでも相手が外しやすい状況をクルトワが作っていたことは確かだ。

 日本代表は大迫勇也や乾貴士、あるいは香川真司といった攻撃陣に特にゴールの期待がかかるが、彼らが3バックのベルギー守備陣を崩しても背後にはクルトワがいる。クロスからのヘディングシュートは遠目なら悠々とセーブされ、逆にゴールエリア付近ならクロスをキャッチかパンチングされてしまう。アルゼンチンのアンヘル・ディマリアがフランス戦で決めたようなスーパーショットでもない限りはセーブされてしまう可能性が高い。

 日本の攻撃で最も効果的なのは、例えば香川と乾の素早いコンビネーションからペナルティエリア内のワイドに侵入し、クルトワをニアに釣り出してファーサイドに原口元気が飛び込んでくるような形だ。あるいはシュートをクルトワではなく、DFにブロックされたこぼれ球をノートラップで打つなど突発性の高いシュートならば、さすがのクルトワも対応しきれないことが多い。

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一流のGKを悩ませるPK