私が声をかけた高校生たちの中には、「キモイ」と拒否反応を示す人も結構いたほどだ。

 では、なぜ、そういう反応になるのだろうか。その最大の理由は、市民の多くが、アベノミクスで経済が良くなったと信じ、しかも、野党の政治では、経済が悪くなると思っているからではないのかというのが私の分析だ。前者は野党側がよく「こぼす」ことである。自民のウソに市民が騙されているというのである。しかし、後者については、野党側から反省の声はあまり聞かれない。

 実は、野党が勝った前回知事選では、地元経済界に「隠れ米山派」がかなりいたことが知られている。米山氏が過去に自民党や日本維新の党に属していたこともあり、保守層にも一定の支持が広がったことや連合や民進党(当時)の支持が得られなかったことから、かえって保守層が支持しやすかったという面があったのだ。ところが、今回、経済界は割れなかった。それは、池田氏が、野党候補、すなわち、左の候補だというイメージが非常に強く出たからだと思われる。

 よく言われるとおり、スキャンダル追及や理念だけでは保守層はもちろん中間層も動きにくい。現実的な経済政策を打ち出せるかどうかが、野党側勝利の一つのカギとなる。さらに、経済振興策でも、「バラマキ」という印象を与えると野党不信がかえって高まる傾向があることにも野党は気づくべきだ。「弱者保護」的な政策を野党が打ち出しても、そんな政策は長続きしないと庶民は直感する。その原資はどこから来るのかについて野党がちゃんと語らないからだ。「弱者に分配すれば経済が良くなって税収も増える」などと言っても、庶民はまやかしだと感じてしまう。そして、「バラマキ」への不安が頭をもたげるのだ。

 面白いことに、自民党が弱者保護的な政策を掲げると、庶民は、「自民党もようやく私たちのことを考えてくれるようになった」と前向きな反応を示す傾向があるように見える。野党が言ったことを自民党がパクったとしても、同じ政策を掲げた野党批判とは全く違った評価になるのだ。これは、安倍政権が、普段から、「成長」「成長」と言っているので、そちらの方はちゃんとやりながら、一方で格差対策にも目配りしているという印象を与え、バランス感覚として、ちょうど良いと感じるためではないだろうか。

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