「今は後ろ(リリーフ)がしっかりしているので、そこが大きいですね。先発としては、そこまでつなげばっていう思いがありますから」

 この交流戦で2勝を挙げ、交流戦通算勝利数を歴代4位タイの23勝に伸ばした石川の言葉で思い出すのは、ヤクルトが14年ぶりのセ・リーグ制覇を果たした2015年シーズン。当時も石川をはじめとする先発投手陣は、同じようなことを口にしていた。この年は41セーブのトニー・バーネット(現レンジャーズ)、そして33ホールドのローガン・オンドルセクと23ホールドのオーランド・ロマンが強固な勝利の方程式を築き、先発投手陣のみならず、野手陣にも絶大な安心感をもたらしていた。

 ヤクルトが置かれている状況も、当時とよく似ている。昨年は球団史上ワーストの96敗を喫してセ・リーグ最下位だったが、優勝した15年も前年は最下位。交流戦終了時でいえば、今年は借金3つで首位から4.5ゲーム差の4位タイ、15年は借金4で首位から3ゲーム差の4位だった。つまり、今年も今後の戦い方次第では上位進出、いや、優勝も決して夢ではないのだ。

 とはいえ、打線に関してはそこまで極端な調子の波はないため、今後の戦い方を左右しそうなのは、やはり投手陣。現状では、小川が復帰したといっても先発はまだ駒不足の感が否めず、リリーフも石山、近藤、中尾がここまでほぼフル回転の状態で、彼らに頼りきりのままでは先行き不安が残る。

 振り返ってみれば、優勝した15年は山中浩史と館山昌平がシーズン途中からローテーションに入って共に6勝を挙げ、リリーフでは秋吉亮が尻上がりに調子を上げて後半は「勝利の方程式」の一角に加わっている。彼らが救世主的な存在となったことが、長いシーズンでは大きくモノを言った。

 交流戦を最高勝率で終えたヤクルトは、リーグ戦再開の巨人戦(6月22日、東京ドーム)で、オフにソフトバンクから移籍してきたサウスポーの山田大樹が今季初先発。前後して新外国人、ジェイソン・ウルキデスの獲得も発表している。また、ファームでは昨秋に手術を受けた大卒2年目の星知弥が長いリハビリを終えて一軍マウンドを目指しており、高卒3年目の左腕・高橋奎二のように着々と力をつけている若手もいる。

 リーグ戦再開後は連敗スタートとなってしまったヤクルトだが、果たして18年版「燕の救世主」は現れるだろうか──それこそが、今後のカギとなりそうだ。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。