ヤクルトの宮本ヘッドコーチ(左)と小川監督(右) (c)朝日新聞社
ヤクルトの宮本ヘッドコーチ(左)と小川監督(右) (c)朝日新聞社

 恒例のセ・パ交流戦で昨年まで8年連続負け越しのヤクルトが、今年は12勝6敗、勝率.667の好成績を残し、開催14年目にして初の最高勝率(2014年までは交流戦優勝の意)に輝いた。今季のヤクルトは交流戦前まで借金9でセ・リーグの最下位に沈んでおり、リーグ最下位で交流戦に突入した球団が王者となるのは史上初のことになるという。

 このヤクルトの快進撃の要因は、どこにあるのか? それは数字を見れば一目瞭然。ズバリ、投手陣にある。交流戦前のヤクルトはチーム打率.252(リーグ4位)、1試合平均4.2得点(同3位)だったのに対し、チーム防御率は両リーグワーストの4.54と、極端な投打のアンバランス状態にあった。

 特に深刻だったのが先発陣で、交流戦前のチーム防御率は先発に限ると4.81。先発投手が「試合をつくった」と見なされるクオリティ・スタート(6回以上投げて自責点3以下の試合、以下QS)は44試合中17試合だけで、逆に先発が5点以上を失った試合は14を数えていた。

 ところがその先発陣が、交流戦に入って奮起した。全18試合中、先発が5失点以上した試合は6月13日の西武戦(メットライフドーム)だけ。交流戦初戦の5月27日のロッテ戦(神宮)では石川雅規が6回4失点で敗戦投手になったものの、翌日からは11試合続けて先発が3失点以下と踏ん張った。QSは計10試合で、交流戦全試合の過半数に達した。

 先発陣で大きかったのは、昨年10月に右肘疲労骨折の手術を受け、今年5月に一軍のマウンドに帰ってきたばかりの小川泰弘の働きだ。交流戦前は3試合に先発しながらQSはゼロで、1勝2敗、防御率6.39という成績だったが、交流戦では先発した3試合すべてQSで2勝0敗、全体5位の防御率1.42をマークしている。

 先発陣の奮起により、交流戦のチーム防御率は3.38と12球団中5位、セ・リーグのチームでは巨人に次ぐ2位に躍進。チーム打率.251、1試合平均4.3得点と打線はほぼ変わらなかったため、投打のバランスが劇的に改善されたのである。

 もっとも先発陣の健闘と切っても切り離せないのが、ゲーム終盤を担う救援トリオの存在だ。4月下旬に中継ぎから抑えに回った石山泰稚は、この交流戦では10試合に登板して1勝0敗7セーブ、防御率0.00。右のセットアッパー、近藤一樹は最終戦で黒星を喫したものの、そこまでは登板8試合すべて無失点で1勝1セーブ6ホールドと、完璧な仕事ぶりを見せていた。さらに2年目の中尾輝が7、8回を近藤と分け合う左のセットアッパーに成長。交流戦では9試合の登板で防御率3.12ながら、うち7試合で無失点に抑えるなど2勝(1敗)4ホールドを記録している。

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リーグ制覇には「燕の救世主」が必要?