また、クイズ以外のバラエティ番組でも、「お笑い芸人」というより「街の変わり者」という雰囲気のカズレーザーの個性が際立って見える場面が多い。

 どんなときにも冷静に淡々とした口調で正論を言って微笑む彼は、テレビに出ている数多くのタレントの中でも突出した存在である。その言動からは、虚栄心や劣等感のような人間臭い感情の起伏がほとんど感じられない。他人に嫉妬したり、自分がどう見られるかを気にしたりすることなく、好きなことだけをやってのびのびと生きている。

 この世のものとは思えない悟りきった態度で今を楽しんでいるカズレーザーは、誰よりも優しく見えるときもあれば、誰よりも冷たく見えるときもある。それは受け手が自分の気持ちを彼に反映させているだけだ。悩みを解決したい人にとっては、いつでもあっけらかんと正論を言ってくれる彼のことが頼もしく感じられるだろうし、心が弱っている人は正直すぎる彼の辛辣な意見に傷つくことがあるかもしれない。カズレーザー本人はただありのままにそこにいるのみだ。

 カズレーザーは学生の頃から全身赤色の服と金髪という現在のスタイルだったという。SNSなどが普及して、誰もが他人にどう見られるかばかりを気にしているような時代に、マイペースを貫いている彼の生き方は魅力的に映る。過度に虚勢を張るわけでもなく、卑下することもない。カズレーザーは私たちがついつい忘れがちな「ありのままに生きること」の大切さを教えてくれる。(ラリー遠田)

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら