65年に渡英したボブ・ディランがホテルの部屋でヤードバーズが出演するテレビ番組を観て興味をひかれるという構成の映像編集にはニヤリとさせられたりもした。じつはこの時期、二人はなんらかの形で交流していたはずなのだ。

 映画の終盤では、苦難に満ちた数十年をへてようやく幸福な家庭を手にしたクラプトンの姿にスポットが当てられている。ドラッグやアルコールとの死闘は、私費を投じての更生施設の開設という、予想もしていなかったはずの地平へと彼を導いていく。運営資金確保のため、ほとんどの愛器を売り払い、大規模なフェスティヴァルを4回も主催した。その満ち足りた表情は、たっぷりと歳を重ね、肉体的な苦痛を抱えながらも、ステージに立ってギターを弾き、歌うことをやめようとしない、まさに今現在の彼の生き方とつながるものなのだろう。

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大友博

大友博

大友博(おおともひろし)1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。dot.内の「Music Street」で現在「ディラン名盤20選」を連載中

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