キンテーロを残したことでFKからのゴールが生まれたものの、コロンビアの攻め手はかなり限られていた。コロンビアは日本の素早い封鎖力に対して攻め手を見出せていなかったが、それでも前半は日本が意外に攻め込んできてくれたので、キンテーロからラダメル・ファルカオの一発カウンターを発動させる余地は残っていた。しかし、後半の日本は後方でじっくりボールを回してから前線に危険なパスを差し込む展開にプレーが整理されていた。

 日本はセカンドボールへのプレスが非常に速いため、コロンビアは自陣から出られない状況に陥った。日本のポゼッションに完全に足を奪われた格好である。ファルカオは単騎速攻で生きるタイプではなく、日本の後方でのパス回しに制限をかけられる運動量もない。

 事態を悪化させたのはその後の2つの交代である。キンテーロからハメスへの交代は同タイプの交換ではあるが、合理的な説明はつきにくい。ポジションを逸脱するハメスは守備面で、よりリスクが大きくなるうえ、そもそも先発できなかったのだからコンディションも良くない。

 さらにイスキエルドからカルロス・バッカへの交代はほとんどギャンブルでしかない。まったく機能しなかったイスキエルドを諦める理由は十分だが、バッカの投入は実質的に4-4-1から4-2-3への変更であり、ボールが日本にある以上、ほとんど意味のない交代策だった。

 ペケルマン監督は事前に「日本を侮るな」と選手を引き締めていたという。4年前にサブ組中心で4-1と大勝している相手なので当然の措置だ。油断は何よりの敵だからだ。しかし、明らかに形勢不利にもかかわらず一発逆転に賭けた采配には、日本を相手にドローはありえないと監督自身が考えていたことが表れていた。(文・西部謙司)