特に物語の序盤では、北岡は「部外者みたいだった」と分析する。「(城戸)真司(演・須賀貴匡)や(秋山)蓮(演・松田悟志)にとって僕は、友人でもライバルでも仕事の相手でもない。ライダーになったときに戦うだけの相手だった。だから、どうしてもふわふわした薄っぺらいキャラクターになりがちだった」と思い起こす。

 状況が変わったのは、王蛇に変身する浅倉威(演・萩野崇)が出現してからだ。逆恨みして執拗に北岡をつけ狙う浅倉と絡むことで、北岡という人間の内面がさらけ出された。現代医学では完治できない病に侵されており、永遠の命を手に入れたいという北岡の「欲望」も明らかにされていく。

「快楽のために犯罪を犯す浅倉と、己の利益のために不当な弁護でも引き受ける北岡。法を犯すか犯さないかの違いはあっても、実は、この二人のベクトルの向きは同じなんです。表裏一体ともいえる浅倉が出てきたことで、北岡のキャラに深みが出た。ただの、いけすかない弁護士ではなくなった」と振り返る。

 そんな浅倉に対して、北岡の足元を固めたのが助手の「ゴロちゃん」こと由良吾郎(演・弓削智久)だった。「画面に映らない場面でも、ああ、北岡とゴロちゃんは事務所でこうやって暮らしているのね、と感じさせるものがあった。帰るべき場所がしっかりあることで、北岡を地に足のついたキャラにすることができた」と語る。

 当初「半年くらい」の出演のはずだった北岡は人気を博し、最終回まで生き残る。

■スピンオフを作りたい

 北岡の最期は、進行した病によって、事務所のソファでひっそりと永遠の眠りにつくというものだった。「北岡は、攻撃は派手だけれど、一人もライダーを殺していないんですよ。そのまま誰も手にかけず病気で死ぬというのは、北岡らしい。僕と戦いたい、という浅倉の願いを叶えるべく、ゴロちゃんがゾルダを引き継ぎ、戦いに赴くのも美しかった」と満足そうに語る。唯一、今でも引っかかっているのは吾郎が変身したゾルダがブランク体には見えなかったことだ。「あれは絶対にブランク体であるべきですよ。だからあんなに簡単に倒されてしまう。それに、僕自身、ゾルダのブランク体の造形を見たかった」と、熱弁をふるう。

 もし、己の「願い」が叶うとしたら、『龍騎』のスピンオフを見たいそうだ。「16年後の『龍騎』の世界を見てみたい。全員が主人公の話が1本ずつ作れますよ。変身前は若い役者でも構わないから、純粋なドラマを作ってほしい」と力を込める。「もし浅倉が生き残ったら、デビルマンとかターミネーター的世界感になるかもしれないし、僕の好きなモンスター『ディスパイダー』が契約してライダーになったらどれほどカッコよくなるか。楽しみ方は無限です」と、話し始めると止まらない。夢を語り続ける横顔に、『龍騎』という物語が架けた『消えない虹』が見える気がした。(文中敬称略)

(聞き手/読売新聞記者・鈴木美潮)