試合後にホセ・ペケルマン監督が「カガワはいい選手なので、(ウィルマル)バリオスを入れて押さえようとした」と振り返ったのも頷ける。一方の乾は、失敗しても何度もドリブル突破に挑んだ姿勢は評価したい。しかし、最後までコロンビアの選手とのリーチ差に戸惑っていたようだ。相手に倒されるシーンも多かったが、主審はほとんどファウルを取らない。最初のプレーがシミュレーションと判断され、その後も厳しいジャッジが下されたとすれば不運としか言いようがない。

 試合後のペケルマン監督は「11人対10人で戦うのに、3分で重要なプレーヤーを失った。前半はなんとか行き残った。1人少なくても同点にした。しかし後半は自分たちのスタイルでプレーすることはできなかった」とサンチェスの退場を悔やんだ。

 一方の西野監督は「スタートからアグレッシブに入って、1プレーで数的優位な状況で試合を進められた。後半は前半以上に動くことで、コロンビアの選手のエネルギーを失わせた。勝てる試合、勝ちきる試合なのでCKからですが(決勝点を取れた)。ハーフタイム後の対応力、修正力がコロンビアを上回れたと思う」と、ペケルマン監督同様、11人のアドバンテージが勝利に結びついたと話していた。

 確かに10人対11人では劣勢を余儀なくされる。しかしサッカーでは、9人対11人ではハンディは明らかでも、10人対11人では10人の方がカバーの意識が高まり逆転勝利を収めることもあるのがサッカーだ。

 ペケルマン監督は10人のハンディを指摘したが、それ以上にコロンビアは選手の誰もが疲弊していた。コンディション調整に失敗したとしか考えられない。4年前に日本を1-4と蹂躙した面影はどこにもなく、日本を翻弄して4点目を決めたハメス・ロドリゲスも、ケガの影響で4年前の輝きを放つことはできなかった。

 W杯でアジア勢が南米勢から勝利を奪うのは初めてだが、日本がコロンビアを圧倒したというよりも、コロンビアが自滅したW杯初の快挙と言えるだろう。(サッカージャーナリスト・六川亨)