この日まで3連勝中の日本ハムだったが、西武の先発・柴田保光の速球に力負けし、5回まで無安打無得点。6回も連続四球で無死一、二塁のチャンスをつくったが、高代延博が投ゴロ、クルーズが中飛に打ち取られ、たちまち2死となった。

 ここで打席に立ったのは、開幕以来打率2割1分1厘と不調にあえぎ、12球団の4番打者の中でも最低の成績だった柏原純一。「これまで打てなかった償いをしよう」と意を決し、82.5センチ、910グラムの短いバットで柴田の速球を一振すると、快音を発した打球は高々と上がり、決勝3ランとなって左翼席に突き刺さった。

 結局、西武投手陣が許した安打はこの1本だけ。日本ハムは75年5月5日に南海がロッテ戦で記録して以来、5年ぶり22度目となる1安打以下の勝利を達成した。

 ちなみに22試合中、唯一の安打が本塁打というのは9試合目だが、3ランはプロ野球史上初(66年5月28日の近鉄戦で南海・野村克也が2ランを記録)の珍事だった。

 チームの4連勝に貢献した柏原は「2球目のカーブを狙っていたが、ボールになったので、ストレートしかないと思って的を絞っていた。今季初めていいところで打てた」と破顔一笑。大沢啓二監督も「こんな勝ち方もあるさ。オレは言うことないよ」とご機嫌だった。

 1安打3得点といえば、高校野球でも、2006年夏の南北海道大会準決勝で、田中将大(現ヤンキース)の駒大苫小牧が北照戦(3対0)で記録している。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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