阪神時代の岡田彰布 (c)朝日新聞社
阪神時代の岡田彰布 (c)朝日新聞社

 2018年シーズンも折り返しに近づき、早くも後半戦の展開に思いを巡らせる今日この頃だが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、80~90年代の“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「キーワードは数字編」だ。

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 「30年後のリベンジ」とも言うべき因縁ドラマの第二幕が話題になったのが、1989年6月25日の巨人vs阪神甲子園)。

 1対4とリードされた阪神は8回、八木裕、亀山努、和田豊の安打で2死満塁のチャンス。ここで3番・岡田彰布が打席に立った。

「計算していたんや。2死満塁からオレに回ってくると。狙うしかないでしょう。3点差やし」とひと振りにすべてを賭けていた岡田は、1ボールからガリクソンの2球目、内角ストレートをフルスイング。打球は左翼ポール際に突き刺さる劇的な逆転満塁弾となり、阪神が5対4で勝った。

 実は、30年前の同じ6月25日に後楽園で阪神vs巨人の天覧試合があり、9回裏、長嶋茂雄が村山実からサヨナラ本塁打を打って、スコアも同じ5対4で決着がついていた。

 くしくも、この試合で完投勝利を挙げた藤田元司は巨人の監督、負け投手になった村山は阪神の監督として30年後の同じ日に対決。そして、ミスタージャイアンツにサヨナラ弾を打たれたリベンジをはたしたのはミスタータイガースだったという意味でも、不思議なめぐり合わせとしか言いようがない。

 「今日やったんか。そりゃ、うれしいな」。30年越しの雪辱を誰よりも喜んだのは、「あれ(長嶋の本塁打)はファウル」と言いつづけてきた村山監督だった。

 2017年に球団ワーストのシーズン13連敗を記録した巨人が、13連敗目となった試合で13打点による失点13、被安打13と悪夢の13つながりを実現させたように、野球は、思いもよらぬ数字の一致現象が起きることがある。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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