才能を高く評価される一方で、プレッシャーも半端ではなかったはずだ。

 それから約10年の時が経ったが、その責任感の強さ、“SKE48愛”はファンの間では広く知られており、自らの青春を賭して「SKE48」をグループ結成以来10年近く支え続けてきた珠理奈にとって、地元・名古屋での晴れ舞台は感慨もひとしおだろう。

 一方で、「SKE48」の3期生としてのデビュー当時はけっして目立った存在ではなかったものの、握手会などのファン対応の良さで次第に頭角を現し、ついには26歳にして珠理奈とともに「SKE48」の、もといAKB48グループの“顔”となった文字どおりの努力の人・須田の2位も古くから彼女を知り、その成長過程を見守ってきたファンにとってはたまらないのではないか。

 そして、そんな2人が開票スピーチで口にした「私は本気で48グループを1位にしないと気が済まない。こんなに頼もしい後輩、温かいファンの方がいてくれる。また48グループはアイドル界のトップになれます! なりたいんじゃダメなんです。なるんです!」(珠理奈)、「ステージの端っこにいても、握手会の列が短くても、ブスだと言われても、運営に押されてなくても、覚悟を決めればファンのみなさんは気づいて応援してくれる」(須田)という言葉や危機感を後輩メンバーたちがどう受け止めるのか、そこにAKB48グループの未来の形があるのではないかと、勝手ながら期待している。

 最後に、好景気と言われながらも、その実、格差が進む昨今。

 やっかみ、嫉妬、ねたみといった感情の交差が何かと目立ち、インターネットの普及などにより情報の拡散性が増す中、アイドルとして“表”に立つことが昔以上にリスクを背負う時代である。

 それでも、たった1度の人生をかけて、泥臭くもひたむきに夢を追い続ける生き様や努力は決して色あせることはなく、とても輝いて見える。

 今年の「総選挙」で元気をもらった一人として彼女たちに心からの感謝をしつつ、日本初のアイドル文化のさらなる発展を今後も見守りたい。(芸能評論家・三杉武)