バナナマンの日村勇紀、よゐこの濱口優など、このところ40代の男性芸人の結婚発表が相次いでいる。そんな中でついにあの男が動き出した。

 6月6日放送の『アッパレやってまーす!』(MBSラジオ)にて、ケンドーコバヤシが一般人の彼女ができたことを報告したのだ。風俗通いを公言してきた万年独身芸人の彼に春が来た。

 ケンドーコバヤシと言えば、女性からの好感度が高い「隠れモテ芸人」として有名だ。外見は決してイケメンというわけではなく、客に媚びないストイックな芸風の持ち主である彼が、女性ファンに根強く支持されているのはなぜなのだろうか。

 ケンドーコバヤシの芸人としての強みは、圧倒的な笑いのセンスとそれに裏打ちされた揺るぎない自信である。番組に出ているときにも決して余計なことは言わず、やたらと愛想を振りまくこともない。自分のペースで堂々とした態度でボケを放つ。そして、それを確実に命中させるのである。

 土田晃之はかつて『アメトーーク!』(テレビ朝日)の「サッカー日本代表応援芸人」という企画の中で、同番組の出演芸人たちをサッカー日本代表のメンバーに例えていた。そこでフォワードの玉田圭司に例えられ、「チームの点取り屋」として高い評価を受けていた男こそが、ケンドーコバヤシである。土田のこの解説には共演者も観客も深く納得していた。ケンドーコバヤシの作る笑いに対する世間の信頼はもはや揺るぎないものとなっている。彼こそは世にも珍しい「すべらない芸人」なのだ。

 彼の得意技は、限られた人しか知らないような漫画やプロレス関連のマイナーな話題を持ち出して、それで笑いをもぎ取ることだ。『アメトーーク!』でも越中詩郎というプロレスラーのことを熱く語り、それを番組でテーマとして取り上げたこともあった。誰も知らないようなことを話して興味を持ってもらえるのは、笑わせるためのトーク能力が恐ろしく高いからだ。

 また、ケンドーコバヤシはしばしば下ネタを口にするが、それで女性客や女性出演者を引かせるということがない。下ネタは笑いの取り方としてはリスクの高い諸刃の剣である。男性が下ネタを口にするとき、そこに少しでもいやらしさが見えてしまったら、女性には気味悪がられてしまう。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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