一方、民泊を運営する中国の会社も、新法の規制が厳しいため、日本の不動産物件を相次いで手放すケースが増えているという。

 東京で中国人向けに賃貸物件や売買物件を紹介している不動産会社の担当者はこう言う。

「“民泊新法”の影響、民泊のために1部屋を購入している中国人の中にも手放す動きは出始めています。ただ、マンションを一棟買いして民泊をやっていたところは、簡易宿泊所として切り替える動きが出ています」

 大阪で民泊をしていた大連出身の中国人女性は、5月末で民泊を辞めた。大阪の私立大学を卒業後、故郷の大連には帰ったが、1年前、大阪の繁華街である難波に、民泊用に物件を3000万円で購入した。2人で1泊500人民元(約8500円)だった。

「民泊投資のために買いました。運営は業者に任せてて、普段は大連にいました。ただ、民泊新法で難しくなり、断念しました。それと、部屋の管理や宿泊客のやりとりやなどで疲れました。売ろうかとも考えましたが、とりあえずは中国人留学生向けに部屋を貸そうかと思います」

 家具を売りに出す人も後を絶たないという。
 前出の男性、女性らはこう訴える。

「”闇民泊”とか言われますが、私が運営した間はトラブルはありませんでした。ほとんどが安全に行われていると思います」

 その一方で民泊を巡るトラブルは聞こえてくる。

 一番多いのは、外国人客らの夜の騒音やゴミ出しトラブルなどで他のマンション住人から苦情が相次ぐケースだ。

「女性しか泊めない物件もあり、そこでセクハラ被害にあう人もいた」(前出の男性)

 また犯罪者が民泊を悪用し、窃盗やバラバラ殺人事件の現場となったこともあった。

 民泊が推進されるにあたって、こうした被害を極力減らす対策が今回の民泊新法の目的だ。新法の施行は約1年前に決まっていたため、民泊を受け入れる側は、十分に対策を取る時間があった。しかし、「手間」という理由で、届出をしなかった人が多いのも現実だ。

 本来、国の文化やライフスタイルを体験したいということが民泊の目的なはず。規制強化によって登録物件が減った現実はあるが、登録物件の質が上がったことにより、安全性が担保され、安心して日本を楽しんでもらうことができる。新法施行以降、民泊をはじめとしたシェア経済圏がどう変遷していくのか、注目したい。(田中将介/大塚淳史)