――2020年の東京五輪に向けての目標をお願いします。

 日本体育大学からオリンピック、パラリンピック選手70人以上が出場する、10以上のメダルを獲得する、という数値目標を掲げています。

 日本体育大学の学生や卒業生がメダリストになって、国民をどれだけ感動させ、励まし、勇気づけても、国はすこしも評価してくれません。たとえば、すぐれた研究を助成する交付金のようなものは出ません。スポーツ選手の育成強化費はみんなJOC(日本オリンピック委員会)にいきます。

 大学にとってアスリート選手の育成にメリットはあるのでしょうか。内村航平さんがどんなに鉄棒ができても、まわりに彼を支える仲間がいなければ、頂点を極めることはできない。入学当初、それほどパッとしなかった学生が仲間と競い合い、また多くの仲間から支えられて、才能を開花しスターになることもあります。教育の場において、そのことを誇りにしてほしい。自分たちの仲間が世界で活躍する。それを目の当たりにすることが、将来、指導者をめざす学生にとって大きな経験となります。

 日本体育大学はこれからも体育、スポーツでの教育、研究、社会貢献を続けて、国民の健康維持につとめ、また、アスリート育成で国民に勇気を与え続けていきます。

◯松浪 健四郎
1946年生まれ。大阪府出身。日本体育大学体育学部武道学科卒業。在学中に68年メキシコ五輪のレスリング代表候補選手に選出。日本大学大学院文学研究科博士課程を修了。アフガニスタン国立カブール大学で教員、専修大学教授を経て、96年から衆議院議員をつとめる。2007年に文部科学副大臣。10年に政界を引退。12年に日本体育大学理事長に就任。大学の北朝鮮スポーツ交流団長として北朝鮮を数回訪問。

(文・小林哲夫/教育ジャーナリスト)