おしゃべりの途中、ふっと会話が途切れ訪れる沈黙……。よくあることですが、なかにはこのような沈黙を堪え難いと感じる人もいます。「沈黙恐怖」といって、社会不安のひとつです。どう対処したらいいのか、『心理学でわかる ひとの性格・感情辞典』から解説します。

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 盛り上がっていた会話が途切れ、ふっと沈黙が訪れることをフランスでは「天使が通った」といいます。沈黙恐怖のある人は「黙っているのは失礼だ」とか「会話が続かないのは自分が無能だからだ」という考えをもっているため、とにかく何か話さなければと焦ってしまい、言わなくていいことや言ってはならないことまでしゃべってしまう。その結果、周囲の信用を失ったのではないかと不安になり、ますます焦るという悪循環に陥ります。

 自分ひとりがしゃべるのではなく、相手から話を引き出すことを意識してみましょう。

 家族のこと、趣味、仕事、健康のこと、旅行の経験談など相手の関心事に興味を示してあげると、相手は「わかってくれた」と喜びを感じ、話がしやすくなります。気持ちよくしゃべらせてあげて、聞き役に回りましょう。これなら失礼にもならないし、批判されるどころか、むしろ好感度が上がります。

 自分が会話を引っ張らなければならないという思い込みを捨て、主導権を相手に渡してしまうのです。気のきいたことを言わねばならない、と考えるのをやめましょう。相手に合わせた行動をとるその代わり、相手の動きを観察することに意識を集中し、調子を合わせてみてください。

 たとえば、相手がお茶を飲んだら自分も飲みます。脚を組んだら自分も脚を組みます(ミラーリング)。また、相手の呼吸に自分の呼吸を合わせたり、声のトーン、テンポやスピードも合わせたりしていきましょう(ペーシング)。

 こうした相互作用的同調行動(インタラクショナルシンクロニー)は、「同調ダンス」と呼ばれる好ましい状態をつくり出します。同調ダンスとは、お互いの気持ちが通じ合うことで、うなずきや相づちのタイミング、話す速度、身振り・手振りなどが似てくることです。親しい間柄では自然に起こる現象ですが、意識的に行った場合でも相手の好意を得られることが実験でわかっています。

 優秀なセールスマンが顧客の心をつかむテクニックでもあり、恋愛テクとして応用されることもしばしばです。ただし、やりすぎは禁物。さりげなくやるのがコツです。