乾貴士 (c)朝日新聞社
乾貴士 (c)朝日新聞社

 ワールドカップの初戦まで2週間を切った。日本代表はFIFAランク6位のスイスとアウェーで対戦したが、守護神ヤン・ゾマーなど主力の一部を休ませた相手に0-2で完敗した。西野朗監督は決め手などの課題を挙げつつもポジティブな見解を示しているが、実際は一朝一夕で改善しにくい問題がいくつも露呈しており、このまま普通に“精度”や“質”を高めるといった方向性では本大会での惨敗は目に見えている。

 守備も前からのプレスが、ちょっとしたポジショニングの変化でハマらなくなってしまうレベルのもの。引いてブロックを形成すれば簡単にシュートまで持ち込まれることはないが、そうしたディフェンスをベースにする考えは今のところ西野監督にも選手にもないと見られる。

 攻撃面では、ボールを持った時にまず相手の裏を狙うというヴァイッド・ハリルホジッチ前監督のコンセプトと異なり、まずボールを保持して中盤を経由させながらタイミングを見て縦に付けていくビジョンが見られた。

 しかし、そのほとんどスイスのディフェンスに脅威を与えることなく、遠目からのシュートはことごとくGKロマン・ビュルキに正面でキャッチされ、サイドからのクロスは中に1トップの大迫勇也、前半途中で代わった武藤嘉紀とプラス1人ぐらいしかおらず、屈強なセンターバックに跳ね返されるか、ファーサイドにボールが抜けていった。

 後半になって、スイスが中盤のプレス強度を落とし、守備陣の選手を交代するなどしたことで、全体的に日本のプレースペースが広がり、ボランチの選手が前を向いてボールを持ちやすくなった。だが、そこからアタッキングサードにボールを運ぶところで狭いパスのつなぎになり、スイスのディフェンスが揃った状態で簡単に対応されてしまった。

 そうした状況の中で数少ないチャンスを作り出したのが、後半11分から左サイドに宇佐美貴史の代わり投入された乾貴士だった。

「(攻撃の組み立てが)狭くなっていたので、右で作ってもらって逆サイドに振ってもらえればフリーというのはいっぱいあったので、そういうシーンが増えればいいかなと思って張ってました」と乾は振り返る。常にボールに寄るのではなく、あえて左のワイドに張り、そこで味方から展開のパスを引き出して、前を向けば縦に仕掛けるなど存在感を示した。

「やっぱり、みんなちょっと固執しすぎている傾向があったり、今までもそうですけど、狭い所になりすぎているところがあるので、そのへんは練習からやっていかないといけない」

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乾が示したアイディアとは…