「これ、いいな」

 しかし、背中を見たら「MATSUZAKA」の名前がどこにも入っていない。ちなみに松坂から背番号18を受け継いだのは寺原と同じ宮崎県出身の後輩の武田翔太だった。

「18だけだったら武田ですやん。武田と思われたら嫌やし……。だから、もらうのはやめときました」

 今季の寺原は右膝痛で調整が遅れていたが、交流戦開幕から1軍に昇格した。サファテ、岩崎翔がいない救援陣の中で中継ぎもセットアッパーもできるタフな右腕は重宝されている。6月5日のヤクルト戦(神宮)では9点ビハインドという状況の5回からマウンドに上がると、残る4イニングを無失点で切り抜けた。34歳の右腕は、まだまだ健在だ。

 松坂大輔と寺原隼人。甲子園の夏を沸かせた2人はプロで投げ合い、チームメートにもなり、そして今、再び「好敵手」として相対するときがやってきた。

「松坂さん、ウチの試合で投げるんですよね」

 寺原が嬉しそうにつぶやいた。ソフトバンクは6月8日からナゴヤドームで中日との3連戦に臨む。松坂はカード初戦となる、きょう8日の先発が決まった。

 松坂対ソフトバンク。古巣に対して、どんな投球を見せてくれるのだろうか。「99」を背負った憧れの人との再会が、寺原も待ち遠しくて仕方がない。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。