いつまでも疑念が収まらず、逆に深まっている要因は、問題に正面から向き合おうとしない政権の姿勢にある。なぜ公文書のずさんな管理がやまないのか。その核心を突き詰めることなしに、信頼回復も再発防止もあり得ない。

 立法府は証人喚問などを通じ、行政監視の役割を果たす。首相をトップとする行政府には、真相解明に全力を挙げる責務がある。政治はいま正念場を迎えている。(解説/朝日新聞論説委員・内田晃)

【キーワード:森友学園問題】
森友学園が計画していた小学校建設用地として、財務省が2016年、大阪府の国有地を約8億2千万円値引きし、1億3400万円で売却した問題。名誉校長に安倍首相の妻・昭恵氏が就いていた。今年3月、財務省が取引をめぐる決裁文書を改ざんしていたことが発覚。財務省が値引きの根拠とされた地中のごみ撤去をめぐり、うその口裏合わせを学園側に求めていたことも後にわかった。

【キーワード:イラク日報問題】
イラク戦争の混乱が続いていた2004~06年、イラク南部のサマワに陸上自衛隊を派遣。憲法は海外での武力行使を禁じているが、当時の小泉純一郎首相は、「派遣地域は非戦闘地域」だとして、野党や世論の反対を押し切って派遣を強行した。国会で、ほんとうに戦闘が行われたか確かめるため日報の提出が求められ、防衛省は「存在しない」と回答してきたが、うそだったとわかった。

【キーワード:加計学園問題】
地域を限って規制緩和を認める「国家戦略特区」の事業として、加計学園が運営する岡山理科大獣医学部を愛媛県に新設する計画が2017年1月、認められた。学園理事長の加計孝太郎氏は、安倍首相の長年の友人。学部新設をめぐり、首相側の関与をうかがわせる複数の文書や証言が明らかになっている。獣医学部はこの4月に開学した。

※月刊ジュニアエラ 2018年6月号より

ジュニアエラ 2018年 06 月号 [雑誌]

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内田晃
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