指導者としても、そうしたゲームメーク能力をチームに落とし込んでいくような印象が強い。バルセロナではクラブのスタイルであるポゼッションサッカーをさらに効率化し、リーグ3連覇に加え、CLとクラブW杯を2回制した。バイエルン・ミュンヘンでは、フィリップ・ラームやダビド・アラバといったサイドバックの選手がインサイドプレーを行うビルドアップが話題を呼び、リーグ3連覇を達成している。昨季から率いているシティーでは、今季に独走優勝を果たして4季ぶりのプレミア王者に導いた。バルセロナのトップチームを率いた初年度の08-09シーズンから、リーグ戦の優勝を逃したのは昨季だけということを考えれば、まさに現代の名将と言って全く差し支えない。

 少し年代をさかのぼると、1974年W杯の決勝を戦った両雄の名前が挙がるだろうか。優勝した西ドイツ(当時)の皇帝フランツ・ベッケンバウアーと「空飛ぶオランダ人」ヨハン・クライフの両名だ。

 この直接対決で優勝を果たしたベッケンバウアー氏の現役時代は、最終ラインを束ねる存在でありながら攻撃参加も行うという当時の概念をぶち壊すものだった。クラブレベルでもブンデスリーガで5回の優勝を果たしているが、それ以上に72年EUROと74年W杯優勝の名声が大きい。そして、指導者として90年イタリアW杯で西ドイツを優勝に導いた。ベッケンバウアーの率いたチームは、史上最も退屈なW杯優勝チームとも称されたが、勝利へのこだわりこそベッケンバウアーが植え付けた最たるもの。選手と指導者の双方で世界一になった。

 一方のクライフは、選手時代からリヌス・ミケルス監督による全員攻撃、全員守備の“トータル・フットボール”の中心にいた。名門アヤックスでリーグを8回制し、欧州チャンピオンズカップ(現CL)を3連覇するなど、よりクラブレベルでの実績が多いとも言えるだろう。それは指導者になってからも同じ傾向だった。

 現役時代にもプレーしたバルセロナを率いた時期のチームは、今でも“ドリーム・チーム”と称されるほどのものだ。ウイングを常に配置する一方で、選手たちが斜めのパスコースとトライアングルをピッチ上に多く作れるように、3バックや3センターハーフなど奇数の配置を行うコンセプトは、現在のポゼッションサッカーにも通じる。このドリーム・チームの中心に君臨していたのが、前述のグアルディオラだったのもサッカー界における大きなロマンだ。

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日本では森保一監督がトップ