つまり、現時点ですでに会場選定、マネー、テレビ局の問題はほぼクリアできているということ。そんな背景から、最近はアメリカでもこの試合が話題になることが少なからずある。ゴロフキン、村田が9~10月に予定する次戦に揃って勝つという条件付きで、筆者も両者の激突が実現する可能性は高いと考えている。

「(ゴロフキンを抱える)K2プロモーションズのトム・ローフラーと、その弁護士とは話はしている。特大イベントになるから、彼らもやる気だよ」

 アラムの言葉通り、メキシコの人気者サウル・“カネロ”・アルバレスとの再戦を除けば、ゴロフキンにとっても日本での村田戦が実は最も興行価値の高いファイトである。日本で得られる報酬は、例えばダニエル・ジェイコブス、ジャマール・チャーロ(ともにアメリカ)のような実力者たちとアメリカで戦うよりも遥かに大きい。業界の通例を考えれば、そんなファイトが挙行されないとは考えにくいのだ。

 もっとも、だからといって実現がほぼ確実と言いたいわけではない。このドリームファイトを妨げかねない要素は複数あるが、中でも最大の障壁はゴロフキンの“4団体統一王者への思い”かもしれない。
 
 3団体の王座を保持するゴロフキンには、現在はプライオリティーであるカネロとの再戦実現に向けて交渉中。同時にIBFから指名挑戦者との対戦指令も出ている。カネロと戦うにしろ、しないにしろ、IBFタイトルを保持したいのであれば、統一王者は近いうちに同級1位のセルゲイ・デレビャンチェンコ(ロシア)と対戦しなければいけない。

 最近は世界王座も名刺代わりと考えているトップ選手は多いが、ゴロフキンは5月中旬に行われたIBFのミーティングに自ら足を運ぶほどにタイトルへの思いは強い。そして、もともとの最大目標である4団体統一を本気で目指すのなら、WBO王者ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)との対戦も視野に入れなければいけない。こうしてカネロ、デレビャンチェンコ 、サンダースをすべて睨みながら、さらに村田戦の早期実現も考慮するのは簡単ではあるまい。

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考えられるさまざまな展開