「投げるのが好きなんですよね。いろいろな可能性を自分に感じているからこそ、まだやるし、試したいこともある。次、これかなとか、考えてやっていると思いますよ、自分の体と向き合いながらね」

 そう語る田口が、さらなる松坂の進化をこう予測する。

「ナックルボーラーとかになって、50歳くらいで投げる。そういうのも、あると思いますよ。そういうの、見たいじゃないですか。松坂だったら、そういうこともあったりするんじゃないですかね?」

 18年前の夏。シドニーで悔しい思いを共有し、そして自らの可能性を信じ、海を渡った同士だからこそ、田口には分かるのだ。

 松坂大輔は、まだまだ投げ続ける。

 不屈の闘志。野球への情熱。たゆまぬ努力と進化。2軍監督というポジションは、次代のプレーヤーにそういった“心”も伝えていく役割でもある。

 松坂大輔と田口壮。立場は違えども、目指す「頂」は、今も変わらない。

 そして、5月29日からはセ・パ交流戦がスタートする。中日の開幕カードは、オリックスとの3連戦。松坂の先発登板も有力視されている。田口が目をかけ、育て、1軍に送り込んだ選手たちが、松坂と対決することになる。(文・喜瀬雅則)

(敬称略)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。