その強い上昇志向の持ち主が、初戦で“次期女王候補”と目される上位選手と対戦するのである。失う物のない強みも加味され、一層危険な存在となるのは間違いない。ちなみに両者は同じアカデミーを拠点としたこともあり、かつては共に練習もした間柄だ。公式戦での対戦はツアー下部大会での一度だけで、その時はケニンが勝利。今から4年前……大坂が16歳、ケニンが15歳の時のことである。

 追われる者の苦しみは、成長過程で必ず通らなくてはならない、ある種の通過儀礼でもあるだろう。初のシード選手として、グランドスラムでは初となる年少者との対戦――それらがもたらす重圧を「仲良くない」クレーで乗り越えた時、大坂なおみの上位進出への道は大きく開けるはずだ。(文・内田暁)