高岡商の山田龍聖投手 (c)朝日新聞社 
高岡商の山田龍聖投手 (c)朝日新聞社 

 本格派サウスポーは、その希少性から高く評価されることが多い。今年のプロ野球を見ても、規定投球回数をクリアしている投手は両リーグ合わせて34人のうち、日本人の左投手はわずかに6人。防御率10傑に名を連ねているのは東克樹(DeNA)と辛島航(楽天)の2人だけという状況である。特に高校卒で入団した選手は少なく、昨年最多勝と最優秀防御率に輝いた菊池雄星(西武)もシーズン終了後のメジャー移籍が有力視されている。他ではリリーフの松井裕樹(楽天)と3年目の小笠原慎之介中日)がわずかに目立つ程度だ。そこで今回は菊池の後釜となれる可能性を持った貴重な本格派サウスポーの素材を高校球界から探してみたいと思う。

 まず今年の3年生で代表格と言えるのが山田龍聖(高岡商)だ。昨年夏の甲子園ではリリーフ登板で1回1/3を投げて6失点(自責点4)と結果を残すことはできなかったが、スピードは最速143キロをマークし素質の片鱗を見せた。昨年秋の県大会では準決勝で選抜にも出場した富山商に0対3で敗れたものの16奪三振をマークしている。山田の特長は長いリーチを強く柔らかく使える腕の振り。テイクバックでのヒジのたたみ方がうまく、前で大きく腕を振ってリリースできるため打者は差し込まれることが多い。重心が上下動して抜けるボールが多いのは課題だが、フォームの全体的なバランスは決して悪くない。6月2日から石川県で行われる春の北信越大会でもプロのスカウト陣から高い注目を集めることは間違いないだろう。

 奪三振率の高さであれば、佐野涼弥(浦和学院)も負けていない。層の厚い投手陣の中でも1年秋から主戦となると、昨年春の関東大会では4試合全てにリリーフ登板し11回1/3を投げて17三振、無失点と見事なピッチングを見せてチームの優勝に大きく貢献した。続く夏の埼玉大会でも決勝で、全国優勝を果たす花咲徳栄に敗れたものの、6試合18回を投げて22奪三振、1失点をマークしている。佐野の最大の武器は縦に鋭く変化するスライダー。打者の手元で大きく変化し、ワンバウンドするボールでも打者は思わず手が出てしまう。踏み出した右足のヒザを少し突っ張らせてブレーキをかけるスタイルは、松井裕樹に重なる。今年の春は故障で出遅れ、県大会、関東大会ともベンチから外れたのは気がかりだが、夏までには万全な状態に仕上げてくることを期待したい。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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