五月病と思われる若手社員に対する適切な対応とは?(※写真はイメージ)
五月病と思われる若手社員に対する適切な対応とは?(※写真はイメージ)
小橋正樹氏
小橋正樹氏

 この春から新しい環境に身を置いている人を中心に起こりやすいとされている「五月病」。そのなかでも新入・若手社員の五月病と思われる心身の不調に、職場の上司はどう対応していけばいいのだろうか。大手建設業など多数の企業で産業医を務め、働く人のメンタルヘルス対策に詳しい小橋正樹氏にお話を聞いた。

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「食欲がない、気分が優れず体がだるい、会社に行く気が起きない。そんな症状がゴールデンウィーク明け頃から出てきた場合は要注意です」と小橋氏。最近では新入社員研修が長期化し、実際に職場へ配属される時期が遅くなることも多いため、そのぶん発症もずれ込む、「六月病」と呼ばれるようなケースも見られるという。「大前提として、五月病も六月病も正式な病名ではありません。医学的には適応障害などの診断を受けることが多く、メンタルヘルス不調の一種と考えられます」

 五月病を発症する主な原因は、環境変化に伴うストレスによるところが大きい。ストレスと聞くと辛い出来事や状況に起因すると思われがちだが、結婚や昇進など、一般的に喜ばしいとされる出来事もストレスになり得る。「ざっくりと言えば、そもそもストレスという言葉の意味は外的刺激。入社する、職場異動になる、新しい上司や部下がつく、オフィスレイアウトが変更になるなど、私たちは何か新しいイベントがあると、その状況に慣れるまでの間大なり小なり気を使います。あらゆる身の回りの変化が、実はストレスになり得るのです」と小橋氏は説明する。

 ストレスに遭遇したとき、私たちの体は「戦う」か「逃げる」かの選択をまず迫られる。「例えばドラクエでモンスターに遭遇した瞬間、緊張感が一気に増しますよね。戦闘画面に切り替わると、戦うにせよ逃げるにせよ、私たちの体には自らの身を守るため様々な生体反応が起こり、ファイティングポーズを整えることになります」と小橋氏。ドラクエの戦闘は数分で終わって平穏が訪れるが、日々膨大なタスクに追われる現代のビジネスパーソンは、常に戦闘状態だといっても過言ではない。「戦闘中はいつもよりたくさんエネルギーを使いますが、私たちはストレスによる刺激を受けても心身のバランスを平常に保とうとする、ホメオスタシス(恒常性)という機構が備わっています。しかし、過剰なストレスが長期にわたって持続すると、遂にはエネルギーも枯渇してしまう」(小橋氏)。するとホメオスタシスの堤防は決壊し、様々な疾病が容赦なく襲い掛かってくることになる。それゆえに現代のビジネスパーソンには、エネルギーを充電するために積極的に休戦モードを取りにいく、「攻めの休養」が求められると、小橋氏は説明する。

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