DeNA・井納翔一 (c)朝日新聞社
DeNA・井納翔一 (c)朝日新聞社

「環境の変化に対して適応が早いとか言われるんですけど、あまり考えていないですよ。ペースはつかめていますし、今は任されたところでベストを尽くすだけです」

 DeNAの井納翔一は、そう言うと気持ちの入った表情を見せてくれた。

「リーグ優勝をするためには変化が必要だ」

 今シーズン、開幕前からラミレス監督は常にこう語ってきたが、その象徴ともいえる選手が井納である。

 開幕前に発表された井納のリリーフ転向。右の先発としてイニング数を稼げる井納のリリーバー転身は、ウィーランド、今永昇太ら先発陣の故障も重なったことでシーズンをスタートするにあたり否定的な声もあったが、現地点ではその選択は間違っていなかったように思える。

 基本は、勝ちパターンの7回を任されている。

「7回井納、8回パットン、9回山崎(康晃)。150キロの直球に加え、変化球でも三振が取れる投手が並ぶのは、戦術面はもちろん、精神的にも相手に脅威を与える」

 これがラミレス監督の狙いであり意図としては分かりやすいが、残念ながら打撃陣の不振と先発陣の序盤における失点が響き、この勝利の方程式は、まだ完璧には確立はしていない。

 ゆえに井納は勝ちパターンばかりでなく同点やビハインドでの場面でも登板をし、また4月13日の中日戦では連投となった守護神の山崎に代わり9回のマウンドに立つと初セーブを挙げている。大量リード時の失点が重なり防御率は3点台ではあるものの要所では力強いピッチングでしっかりと抑えており、中継ぎ陣がハードワークを強いられているチームにあって、その存在は非常に大きい。

「井納さんが来たことで、僕はいろいろなところに回されているので複雑な気持ちですが……」と、左の中継ぎの要である砂田毅樹は、笑みを見せながら話し始めた。

「チームとしては楽になったと思いますよ。絶対的なピッチャーが一人増えたのはリリーフ陣としてすごく大きい。もし井納さんがいなかったら、同じポジションを三上(朋也)さんが担っていたと思うんです。すると現在の役割を僕とエスコバーの二人で補わなければいけないので、登板数は今より多くなっていたと思います。そう考えると4月の8連勝も難しかったかもしれない」

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井納の特筆すべき点は…