松坂大輔、江戸の敵は尾張で討つ!
松坂大輔、江戸の敵は尾張で討つ!
松坂の先発で盛り上がる東京ドームの中日ファン(読者提供)
松坂の先発で盛り上がる東京ドームの中日ファン(読者提供)

 9年ぶりの東京ドームのマウンドは、37歳の松坂大輔に想定外のダメージを与えたようだ。三塁側ベンチへ下がる松坂が、わずかながら右足をかばうように歩いているのが記者席からも見て取れた。

「ドラゴンズのピッチャー、松坂に代わりまして、笠原」

 降板を告げるアナウンスが流れたのは、3回一死のことだった。思いも寄らぬ序盤での降板に、左翼席に陣取る中日ファンだけでなく、オレンジ色のレプリカユニホームに身を包んだ巨人ファンの間からも大きなため息が漏れた。

「何とか投げたかったんですけど……。今日のブルペンからおかしかったんです。試合前から(足が)張っていて……」

 だから、プレートを蹴る右足の力がどうしても弱くなったのだろう。1回、巨人の先頭・坂本勇人への初球は、138キロのストレート。それを坂本に完璧に引っ張られ、レフト前へのクリーンヒット。続く2番の吉川尚輝もバントの構えを見せない。巨人が松坂を攻め立ててきた。

 初球は134キロ。何とも力感のないストレートだ。続く2球目のカットボールも133キロ。キレを欠いたその球を吉川尚がジャストミートすると、打った瞬間に「それ」と分かる打球。あっという間に右翼席上段へ飛び込んだ。

 この先制2ランは吉川尚にとって記念すべき「プロ1号弾」だった。平成の怪物、憧れの大スターから放った一発に「一生忘れません」と声を弾ませたのも無理はない。

 さらに2死から、5番の21歳・岡本和真に137キロのカットボールを右中間へ運ばれ、フェンス直撃の二塁打。亀井善行の四球で2死一、二塁とさらにピンチを招くと、打席に7番の長野久義を迎えた。

 4球目、140キロのカットボールをセンターへ運ばれた。大飛球が大島洋平のグラブに収まったのは、フェンスの1メートル手前。2失点に収まったものの、危なっかしい、ふらふらの立ち上がりだった。

 2回は三者凡退に打ち取り、一見、立ち直ったかのように映った。しかし、3回裏のマウンドに向かう前に三塁側ベンチ前で肩慣らしのキャッチボールを始めた松坂が、その合間に幾度となく両足の伸脚運動を繰り返している。

 何かが、おかしい。

 3回、先頭の吉川尚を左飛に打ち取って、本塁打のリベンジは果たすも、続くゲレーロにセンター前ヒットを許して1死一塁。すると松坂が、今度はマウンド背後の平地で再び、右足を伸ばす動作を取った。

 どうも、しっくりこないのだろう。

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クイックもあまりに遅すぎた…