家族の事情も変わりうる、自分の働き方も変わるかもしれない、子どもの問題もあるかもしれないということを考えるなら、人生のうちで何回か引っ越しをする方が好都合だという場面がありそうだ。住居に求める条件は、人生のその時々によって変わっていくものだ。

 貸したり、売ったりする可能性がゼロでないのなら、投資物件としてどれくらいの価値があるかは重要な問題だ。家を買うことは、「たまたま自分が店子であるような不動産に投資する」ことだと捉えるべきなのだ。

 不動産投資には、おおむね株式投資なみのリスクがある。しかし、多くの人がこの点を見過ごしがちだ。例えば1000万円のお金があって、これを運用しようというときに、全額をリスクをとった運用に回すということに対しては、多くの人が不安に感じるのではないだろうか。

 しかし、家を買うという話になると、なぜか1000万円の自己資産を頭金にして、例えば5000万円の不動産をローンで購入することを決めてしまう。不動産の場合、株価のように価値が大きく変動することをイメージしにくいのだろう。

 不動産の購入は、株式投資で言うと、ある土地に立っている家という1つの銘柄に、何千万円もの資産を、全額投資することと同じだ。しかも、自己資金が1000万円しかなくても、住宅ローンによって、例えば5000万円という額を投資することになる。株式投資で言うなら、自己資産の何倍もの信用取引に相当する。

 さらに、今の日本の状況を考えると、これから人口が減っていくことが確実だ。住む人が減っていく中で、不動産に投資するということは、需要と供給の面で非常に不利な勝負になる。

 ネガティブなことばかり言っているように思われるかもしれないが、もし投資の対象になるような物件があったときに、それを買って自分が住むということが納得できるなら、検討に値する。

 つまり、「家は賃貸か、購入か?」を判断するための基本原則を一言で表すとしたら、「投資として考えた場合に、価格が十分に安ければ買うのがいいし、逆に高ければ賃貸で住む方がいい」ということだ。