一方の野手は、高校、社会人、プロというルートでレギュラーとして活躍しているのは福留孝介(PL学園→日本生命→中日→カブス→インディアンス→ホワイトソックス→阪神)と本多雄一(鹿児島実→三菱重工名古屋→ソフトバンク)、期待の若手も西川龍馬(敦賀気比→王子→広島)くらいである。

 プロで活躍している選手の大半は高校、大学、社会人とステップアップしているのが特徴的だ。ベストナイン、ゴールデングラブ賞を含むタイトルホルダーは田中広輔(東海大→JR東日本→広島)、宮崎敏郎(日本文理大→セガサミー→DeNA)、小林誠司(同志社大→日本生命→巨人)、大島洋平(駒沢大→日本生命→中日)と多くはないが、いずれも日本代表クラスの選手である。

 また渡辺直人(城西大→三菱ふそう川崎→楽天→DeNA→西武→楽天)、脇谷亮太(日本文理大→NTT西日本→巨人→西武→巨人)、藤井淳志(筑波大→NTT西日本→中日)など長く一軍の戦力となっているいぶし銀タイプの選手も少なくない。小林は大学時代も指名が有力視されていたが、それ以外の選手は社会人で開花した選手ばかりである。田中は高校時代にバリバリのドラフト候補で大学で一時低迷したが復活しており、宮崎は社会人への加入もなかなか決まらなかった経験をしている。そのような停滞期を乗り越えたという強さが、彼らのプロでの活躍につながっているのではないだろうか。

 社会人出身の選手はプロ入りする年齢が25歳前後ということが多く、通算記録では上位にランクインすることは少ない。しかし古田敦也(立命館大→トヨタ自動車→ヤクルト)、宮本慎也(同志社大→プリンスホテル→ヤクルト)、和田一浩(東北福祉大→神戸製鋼→西武→中日)のように大学から社会人経由でプロ入りしても長く活躍し、名球会入りする選手も確かに存在している。

 また、3度の三冠王に輝いている落合博満(東洋大中退→東芝府中→ロッテ→中日→巨人→日本ハム)も社会人野球出身であり、プロ入りしたのは26歳になる年だった。社会人出身の選手は高校野球での実績が少ないことが多いだけに地味な印象があるかもしれないが、プロでも一大勢力となっていることがよく分かる。近年その勢いは増してきており、今後も落合や古田のような歴史に残る選手が出てくることも十分に期待できるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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