だが、原発事故の収束に向けた努力は着実に続いている。双葉町の沿岸部を車で走ると、除染作業を行う一団が目に入った。「復興に向けて、元通りの生活を取り戻そうという動きがあるということを忘れないで欲しい」、橋本さんはそういった。

●復興のための帰郷

 先出の軍司さんは昨年末に、震災前に暮らしていた小高区に住宅が完成し、牛越仮設住宅から移り住んだ。自治会長として、定期的に自宅と仮設住宅を往復する生活を送っている。

 新居の生活は快適だと語るものの、やはり不便は付きまとう。近所には食品や雑貨を購入できる商店はほとんどない。住民も少なく、空き家も目立つ。しかし「避難者が自分の故郷に戻り、元の生活を取り戻していく事が本当の復興につながるのではないか」という強い思いがあるという。人が増えればインフラも整備され、街はかつての在り方を取り戻していく。決して楽な道のりではないが、軍司さんはそれを選んだ。

「オリンピックの際には世界中から注目が集まることと思います。立ち直ったきれいな町並みを見てもらうために、さらに復興を進めて行って欲しい」(軍司さん)

「復興五輪」の看板に恥じぬ姿を世界に示せるか。いまこそ日本の力が試される。

(文・写真/新垣謙太郎、小神野真弘)