ジョアンナ・ロウセルさん。五輪だけでなく世界選手権でも5回の優勝を飾っている(撮影・岡田晃奈)
ジョアンナ・ロウセルさん。五輪だけでなく世界選手権でも5回の優勝を飾っている(撮影・岡田晃奈)

 女子自転車団体追い抜き競技で、イギリス代表として2012年ロンドン五輪、16年リオデジャネイロ五輪と2大会連続で金メダルを獲得したジョアンナ・ロウセルさんが4月20日、東京・新宿区のアデランス本社ビルで会見を行った。彼女が語った、アデランスとの接点とは?

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 ロウセルさんは幼少のころから髪の毛が抜け落ちるアロペシア(脱毛症)を患い、10歳のころにはほとんどの髪が抜け落ちた。日常生活ではウィッグを着用しているが、競技中はウィッグを脱いで、バンダナで頭部を覆い、ヘルメットを着用する。母国開催だったロンドン五輪でのメダル授与式でチームメイトと共に登壇した彼女の頭部には、ヘルメットもバンダナも、そしてウィッグもなかった。

「周囲にも病気のことは公言していましたし、授与式の件も私にとっては普通のことでした」と振り返る。しかし、観客・視聴者にとって、その場面は普通のことではなかった。メディアからの質問も競技ではなく、病気に関することが多くなる。報道は五輪後も白熱していった。

「私はこのメダルを獲得するために長年、努力を続けてきました。そして、結果が出た。それとアロペシアは関係ありません。『誰もそんなこと気にしないかな』と、楽観していたんです。しかし、スポットライトを浴びると状況は一変しました」

 失礼な質問もあったという。

「『彼氏はいるの?』という質問に『います』と答えると、驚かれるんです。『そういうふうに思われているのか』と、フラストレーションがたまったこともありましたよ。ですが、ネガティブなことばかりではありませんでした」

 彼女に関する報道により、イギリス国内でのアロペシアの認知度、理解が一気に高まった。そして、同じ病気の人たちやその家族からたくさんのメッセージが届いた。その多くが、「ジョアンナさんのおかげで周囲の対応が変わった」という内容のものだった。

「このことを通じて、同じ病気の方のためにも私の経験をより一層伝えていこうと決めました。金メダリストの私だからできることがあるはずです。イギリスだけでなく、世界へ向けて発信していきたいのです」

■ウィッグが持つ力とは

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