ここまで見ると、特に就任1年目は5位が2人(藤田、有藤)で最下位が3人(稲尾、長嶋、広瀬)と苦しんでいることが分かる。だが、伊東勤は違った。現役引退直後の2004年に41歳で西武の監督に就任すると、レギュラーシーズンの2位(74勝58敗1分、勝率.561)から12年ぶりの日本一を達成した(同年はプレーオフ勝利チームをパ・リーグ優勝チームとした)。2年目以降は3位、2位、5位。最終年に球団26年ぶりのBクラスとなっての退任となったために後味は良くなかったが、1年目から成功を収めた唯一の「現役引退即監督」と言えるだろう。

 そう考えると、2016年から巨人の監督を務めている高橋由伸の就任1年目は2位(71勝69敗3分、勝率.507)と決して悪くはなかった。プレーオフを勝ち抜けば賛辞も得られただろう。しかし2年目の昨季は4位。3年契約の3年目となる今季は自身の進退がかかる正念場のシーズンとなっている。この高橋監督も含めて過去の事例を振り返ると、チームの転換期、窮地に火中の栗を拾う形で監督を引き受ける場合が多い。球団としてはスター選手の名声に頼ったと言えるが、監督個人としては、やはり一度チームから離れて客観的に野球に触れ、チームを指揮する上で重要な「俯瞰力」を養う必要があっただろう。現役時代から捕手としてチームの司令塔の役割を担っていた伊東監督は、その力が就任前から備わっていたと言える。

 そして8人目が、今季からロッテの監督に就任した井口資仁である。彼には日本2球団に加え、メジャー4球団でプレーしたという過去の面々とは異なる経験がある。球団生え抜き以外の「引退即監督」は、井口監督が初めてなのだ。年齢的にも43歳で20代の選手たちとの上下関係も作りやすい。開幕19試合を終えた時点では8勝11敗の4位(4月24日試合終了時点)。ここからの手腕、初のメジャー経験日本人監督の、引き出しの多さに期待しよう。