“ゴキブリ帰国騒動”から13年後、今度は「神のお告げ」で退団帰国というこれまた前代未聞の事件が起きた。

 主役となったのは、1997年に阪神入りしたグリーンウェル。メジャー通算打率3割3厘、130本塁打の実績を引っさげ、当時としては球団史上最高の推定3億6千万円の2年契約で契約。住居も神戸市内の超高級マンションの3LDK2戸をぶち抜いた総面積200平方メートルの超豪華版だった。

 さらにはグリーンウェルの7文字を入れるため、甲子園の電光掲示板を改修するなど、デビュー前からスケールの大きな話題で新聞紙上を賑わせた。

 ところが、春季キャンプ中に腰の不調を訴えて突然帰国してしまったのがケチのつきはじめ。ペナントレース開幕後も腰の状態を理由に再来日をズルズル引き延ばし、開幕から3週間以上経過した4月30日にようやく戻ってきた。

 そして、日本デビュー戦となった5月3日からの広島3連戦(甲子園)で12打数5安打5打点と現役メジャーリーガーの本領を発揮。吉田義男監督を喜ばせた。

 ところが、好事魔多し。同10日の巨人戦(東京ドーム)で三沢興一のスライダーを強振した際に、自打球が右足首を直撃。検査の結果、骨折で全治4週間と診断された。

 主砲の長期離脱に吉田監督は「これからというときに……」と頭を抱えたが、直後、さらなる悪夢が待っていた。なんと、グリーンウェルは「足のけがは“野球を終われ”という神のお告げだと感じた。これからは家族と過ごしていく」と突然引退を発表。同16日に帰国してしまった。

「嵐のように来て、嵐のように去っていった。つむじ風のような男だった」(吉田監督)。まさに言い得て妙である。

 途中帰国するのは、選手に限った話ではない。

 グリーンウェルの“神のお告げ退団”から1ヵ月後、今度は審判技術の向上と日米交流を目的に来日し、セ・リーグの審判を務めていたマイク・ディミュロが辞任帰国する事件が起きた。

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「経験したことのない恐怖感を覚えた」