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なぜ、メジャーリーグでは乱闘がなくならないのか?

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杉山貴宏dot.

現地11日に勃発したRソックス対ヤンキース戦での乱闘(写真・Getty images)

現地11日に勃発したRソックス対ヤンキース戦での乱闘(写真・Getty images)

 メジャーリーグでは味方が死球やラフプレーにあったら報復すべきという「アンリトンルール(暗黙の了解)」があるのは事実。やったらやりかえすぞという姿勢を見せることで相手をけん制するのは、前述した冷戦構造による抑止力や銃所持による自己防衛といったものに通じるアメリカ的な気質なのかもしれない。とはいえ死球は故意でなくとも発生するものであり、これへの報復が構造上で必須と考えられている限りは乱闘がなくなることはないだろう。

 こうした文化、伝統を非合理的、野蛮と切り捨てるのはたやすく思えるが、それはその文化の外側から見た場合のことだ。メジャーリーグ、アメリカという枠の中に限った話ではなく、日本の文化、スポーツにも合理的とは程遠い伝統は数多く残っており、それに対する意見は様々だが「譲れないもの」というのは、それぞれ違って当たり前なのだ。

 また乱闘に限っても、野球の華であるという意見は根強い。現に11日のヤンキース戦での乱闘は田中将大投手の先発試合ということで日本でも注目を集めたこともあって、日本でももっと見たいなどと乱闘に肯定的な声はネット上などから少なからず聞こえてきた。

 だがもし大谷翔平選手(エンゼルス)ら日本人プレイヤーが乱闘に巻き込まれて負傷したとしても、同じことを主張できるだろうか。あるいは大谷が死球をぶつけられ、その報復としてチームメイトが相手選手に仕返しすることを大谷自身が喜ぶだろうか。とてもそうは思えない。

 メジャーリーグでは本塁上でのクロスプレーや、併殺崩しでの危険なスライディングを禁止するルールを近年に相次いで導入した。これらは選手たちを故障のリスクから遠ざけるためだ。その一方で乱闘に関してはいまだに野放し。これでは理にかなわない。取り返しのつかない事態が起こってからでは遅いのだ。他国の文化・伝統に安易に口を突っ込むべきではないが、乱闘への全員参加の事実上の強制には声を大にして異を唱えたい。(文・杉山貴宏)


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