実績ではこの二人に大きく劣るものの、ウルフ(西武)もメッセンジャーと並び、今シーズンでNPB9年目となる。ソフトバンクに在籍していた2014年と2015年は右ひじの故障でシーズンの大半を棒に振り、翌2016年もシーズン途中で加入だったが、通算52勝は立派な数字である。

 きれいな回転のストレートは全く投げず、手元で小さく動くボールで打たせてとるピッチングが持ち味。日本ハム時代のような球威はなくなったがそれでも140キロ台中盤のスピードはあり、コントロールが安定しているため中盤までは試合を作ることができるのは大きい。今シーズンも貴重な先発投手として重宝されるだろう。

 一方の野手ではバレンティン(ヤクルト)が今季で8年目、エルドレッド(広島)が7年目を迎える。バレンティンは故障で長期離脱した2015年以外の6年間で30本塁打以上をマークしており、その長打力は衰えを感じさせない。不調時はボールから目が離れるのが早く簡単に三振するシーンも少なくないが、好調時は手がつけられない勢いでホームランを量産する。緩慢な守備を補う意外な肩の強さがあることも長所だ。今シーズンもここまでチームトップの3本塁打、11打点をマークしチームを牽引している。

 エルドレッドは故障が多く規定打席に到達したのは2014年の一度だけだが、在籍6年間で128本塁打を放っている長打力はチームにとっては欠かせない戦力となっている。今シーズンも打率は低いものの、既に3本塁打を放っており、そのパワーは健在だ。

 長く活躍している選手の共通点として挙げられるのは、役割とチームからの期待が明確だという点にある。メッセンジャーとウルフは来日当初はリリーフだったが先発に転向してから成績を伸ばし、サファテもソフトバンクで抑えに定着してから格段に安定感がアップした。

 また、バレンティンとエルドレッドもチームが期待するホームランを量産してきたからこそ、今の地位が確立されたのである。そして、チームが短期間の不調や故障ですぐに見切りをつけずに、ある程度我慢できるかということも重要な要素と言えるだろう。

 サファテやメッセンジャーのように故障とは無縁の選手は数少ない。ウルフとバレンティンは、ほとんど試合に出場できなかったシーズンがあり、エルドレッドも先述したように故障の多い選手である。しかし目先の状態に左右されず、持っている力を判断して契約を延長してきたことがチームにとっても大きなプラスになったことは事実だ。

 さらに、エルドレッドは家族も広島で生活しており、娘を自転車に乗せて走る姿がおなじみになるなど、日本での生活に溶け込む努力を怠らなかった点も契約延長となった理由の一つであることは間違いないだろう。

 プロ野球黎明期のスタルヒン(巨人など)を除くと、外国人選手のNPB球団在籍最長記録は郭泰源(西武)、タフィ・ローズ(近鉄→巨人→オリックス)、ラミレス(ヤクルト→巨人→DeNA)の13年である。簡単に更新できる記録ではないが、彼らを上回る優良外国人選手が今後出現することにも期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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