リオ五輪のレスリング女子58キロ級決勝に臨む伊調馨選手と栄和人氏(当時)=2016年8月 (c)朝日新聞社
リオ五輪のレスリング女子58キロ級決勝に臨む伊調馨選手と栄和人氏(当時)=2016年8月 (c)朝日新聞社
記者会見で謝罪した日本レスリング協会の福田富昭会長(右)と、会見に出席した衆院議員の馳浩副会長=4月6日、東京都渋谷区(撮影・福井しほ)
記者会見で謝罪した日本レスリング協会の福田富昭会長(右)と、会見に出席した衆院議員の馳浩副会長=4月6日、東京都渋谷区(撮影・福井しほ)
栄氏のパワハラ行為を告発した貞友義典弁護士(撮影・西岡千史)
栄氏のパワハラ行為を告発した貞友義典弁護士(撮影・西岡千史)

 日本レスリング協会は6日、都内で開かれた緊急理事会後の記者会見で、レスリング女子で五輪4連覇の伊調馨選手(33)に対し、同協会の栄和人強化本部長(57)がパワハラを行っていたことを認定したと発表した。伊調氏へのパワハラについては今年1月、内閣府に告発状が届き、同協会は第三者の弁護士に調査を委託していた。

【写真】元文科大臣も出席した協会の謝罪会見

 会見で公表された調査報告書では、栄氏が伊調氏に「よく俺の前でレスリングできるな」と言ったり、伊調氏のコーチである田南部力氏に「伊調の指導をするな」と強要したりしていたことなど、計4件のパワハラを認定した。

 栄氏が監督を務める至学館大で、パワハラ報道に反論していた谷岡郁子学長(同協会副会長)も緊急理事会に出席。同協会によると、谷岡氏は「こんな状況になってしまって申し訳ない」と謝罪したという。栄氏本人は理事会に出席せず、強化本部長の辞任届は谷岡氏が代わって提出。栄氏は「自分の不徳の致すところ」というコメントのみで自ら釈明しなかった。

 2020年の東京五輪を控え、金メダルの量産が期待される女子レスリング界の不祥事。同協会は栄氏と共に当初、疑惑を否定していただけに、世間からその隠ぺい体質に厳しい目が向けられている。一方、今回公表された報告書の内容は十分に調査されたものだったのか。AERA dot.編集部では、告発状を提出した貞友義典弁護士を直撃。告発人の目から報告書の内容を読み解いてもらった。

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■貞友義典弁護士への一問一答

──調査報告書を読んで、どう感じましたか。

 パワハラが認定され、とりあえず安堵しました。

 一方で不本意な点もあります。事実認定では、伊調氏に対する警視庁の練習場への出入り禁止という、練習妨害が認定されませんでした。

 その根拠として、警視庁のレスリング部監督の独自の裁量だとして、栄氏や協会幹部の関与を認定していません。栄氏らが指示したという証拠がないということだと思います。しかし、そのような証拠を残すはずはありません。監督が、警視庁への出入り禁止をする合理的理由があったのかは、もう一歩踏み込んで検討してほしかったと思います。

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報告書では解明されていないこととは?