そのハミルトンが属したレンジャーズの監督を2007年から14年まで務めたロン・ワシントンも、2010年に前年の薬物検査でコカインの陽性反応を示していたことが発覚。それでもワシントンはチームの指揮を執り続け、2010年、2011年とレンジャーズを2年連続リーグ優勝に導いている。

 昨季途中までレンジャーズでプレーしたダルビッシュは、この二人の軌跡を間近で目にしている。ハミルトン、ワシントンはともに完璧な人間ではなくとも、球界内での評判の良い好漢たち。清原氏に対するダルビッシュの言葉の背後には、彼らとの過去の接触の経験が少なからず影響しているのだろう。

 薬物問題に限らず、飲酒、刑事事件など、米スポーツ界では不祥事を犯した選手たちへの“セカンドチャンス”が認められる傾向にある。

 ダリル・ストロベリー、ドワイト・グッデンといった元メッツのスーパースターたちは、薬物、飲酒などで何度もトラブルを起こしており、両者ともに現役時代に出場停止処分を受けた経験がある。それでも、ニューヨークでは二人とも依然として人気者。特にストロベリーは地域のイベントなどにも盛んに登場し、その度に喝采を浴びている。

 同じトラブルを懲りずに繰り返す選手には風当たりも強くなるが、立ち直ったとみなされた者に対して世間は意外に温かい。更生を果たしたサクセスストーリーと受け取られ、拍手すら送られるのだ。

 賛否両論あるかもしれないが、こんな部分は米国社会の懐の深さを表しているとも言える。清原氏が日本で同じように認められるのにはより長い時間と努力が必要になるのだろうが、希望を捨てるべきではない。海の向こうのスーパースターたちの更生例は、少なくとも励みにはなるのではないか。(文・杉浦大介)