薬物問題から復活したハミルトン(写真・Getty images)
薬物問題から復活したハミルトン(写真・Getty images)

 米国でも投打の「二刀流」に挑む大谷翔平が、さっそく彼の地で大きなインパクトを残している。「8番・DH」としてメジャーデビューを飾った先月29日のアスレチックス戦では初打席初安打という上々の滑り出しを見せると、投手デビューとなった4月1日の同カードでは初登板初白星の快挙を成し遂げた。

 勢いはまだ止まらない。さらに本拠地デビューとなった3日のインディアンス戦で初回にいきなりの3ランホームランを放つと、翌4日には昨季サイ・ヤング賞投手から本塁打を放ち、2試合連続アーチと衝撃的な活躍。大谷は今、日米で一大センセーションを巻き起こしている。

 かつては「大人と子ども」と揶揄されたこともある日米の差は、1995年に野茂英雄がドジャースに移籍して日本人選手メジャー挑戦の道を切り開いて以降、確実に縮まっている。だが、その一方で、まだまだ天地ほどの差があるものもある。「しくじった者」に対する姿勢の差もその一つだ。

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 2016年2月、元スーパースターの清原和博氏が覚せい剤所持容疑で逮捕された事件は、スポーツ界の範疇を超えた大きな話題を呼んだ。今後、社会復帰を果たすまでには長い道のりが待ち受けている。特に本人が望んでいると言われる野球人としての現場復帰は、日本では並大抵の難しさではないだろう。

「日本もセカンドチャンスを持てる社会にならないと。こちらでも一度薬物に手を出しても、もう一度チャンスをもらっている」

 清原氏の逮捕直後、当時はレンジャーズに所属していたダルビッシュ有(現在はカブス)がそう述べていたことがあった。清原氏へのエールであり、日本社会への提言とも取れるコメント。実際に米国では、薬物乱用などの不祥事を起こしてしまった選手、元選手が現場復帰することはそれほど珍しくはない。

 最近で最も有名な例は、コカイン依存症などを克服してスーパースターになったジョシュ・ハミルトンのケースだろう。1999年のドラフト全体1位でデビルレイズ(現レイズ)入りしたハミルトンは、度重なる薬物使用で一時的に球界から追放状態になった。2004年からの2年間はベースボールから完全に離れ、自殺も考えたほどだったと伝えられる。しかし、この薬物中毒を克服したハミルトンは、2007年以降はメジャーの舞台で華々しく活躍。2008年に打点王、2010年には首位打者とMVPを獲得するなど、アメリカンドリームの体現者となった。

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“セカンドチャンス”が認められる米国