大阪桐蔭の柿木投手 (c)朝日新聞社
大阪桐蔭の柿木投手 (c)朝日新聞社

 いよいよ大詰めを迎えた選抜高校野球ドラフト戦線という意味でも大きな意味を持つ大会であり、例年通り大会序盤は多くのスカウトが連日ネット裏から視察する姿が見られた。そこで今回は、今大会に出場した選手の中から秋のドラフト会議で話題となる可能性が高い選手をピックアップして紹介したい。

 投手で最も素晴らしいパフォーマンスを見せたのが柿木蓮(大阪桐蔭)だ。昨年秋の明治神宮大会ではストレートが走らず苦しいピッチングだったが、冬の期間でしっかり立て直してきた。手足が長く、いかにも投手らしい体形で、一冬越えて下半身が大きくなり、ピッチングに安定感が出てきた。ストレートは140キロ台前半が多いが、ヒジを柔らかく使って前で大きく腕を振ることができるため、数字以上の威力を感じる。

 球種も多くないが、スライダーの変化に幅をつけて相手を抑え込むピッチングは圧巻だ。昨年の大阪桐蔭のエースだった徳山壮磨(早稲田大)も好投手だったが、現時点でのスケールの大きさでは柿木に軍配が上がるだろう。順調にいけば上位指名の可能性は高い。柿木に次ぐ存在としては、市川悠太(明徳義塾)を挙げたい。秋まではそれなりにスピードは出るものの、目立った長所が見えない投手だったが、この春はフォームに躍動感が出てストレートも変化球もワンランクレベルアップした印象を受けた。

 少しトルネード気味に体をひねり、サイドから投げ込むフォームが特徴。リリースでの指のかかりがよく、コンスタントに140キロ台をマークするストレートは勢い十分だ。そして、それ以上に素晴らしいのがスライダー。手元で鋭く大きく変化し、左打者は自らの足に当たるボールを振ってしまう場面も見られたほどだった。シュート系の抜くボールの精度が上がれば、さらに攻略が難しい投手になるだろう。

 確実に指名されるという意味では柿木、市川の二人という印象だが、将来的には面白いという投手は他にもいた。将来性の高さで注目を集めたのは土居豪人(松山聖陵)。まだまだ体つきは頼りなく、典型的な未完の大器だが、約190センチの長身から投げ下ろすストレートは最速147キロをマークした。先輩のアドゥワ誠(広島)に比べると不器用な感は否めないが、貴重な大型投手として今後も注目を集めることになりそうだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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