これに対し、日本のキャッシュレス決済比率は現在20%程度にとどまる。日本銀行の生活意識に関するアンケート(2011年4月)によると、日本の消費者が現金以外の決済手段を利用しない理由として「利用する機会がない」「使いすぎてしまう」「現金以外で支払うことに不安」などが上位を占めている。

 日本では、銀行のATM(現金自動預払機)の普及が進み、外国に比べて、現金を使った買い物が便利であるという背景もある。しかし、銀行はこうした現金流通を支えるための高コスト体質の見直しを迫られており、キャッシュレス化による決済効率性の向上や、ブロックチェーンなどの新たなフィンテック(金融技術)を使った決済コストの削減などの検討に迫られている。康井氏は「Origami Payと銀行との連携はこれから増えていく」と話す。

 一方、日本では、SuicaやICOCAなどの交通系ICが先導役となり、都心のコンビニエンスストアなどの小売店を中心にした電子マネーのインフラ整備は進んでいる。とはいえ、観光地の参道沿いにある小規模店や地方の商店街などではキャッシュレス対応が進みにくい状況だ。地方では、都心ほど交通機関が発達していないためにICカードの普及が進まないうえ、小規模店舗が、クレジットカードなどの決済端末を置くには、初期費用と月々のリース料などの負担が重いからだ。

 康井氏は「地方のキャッシュレス化を進めるには、QR決済は有効だ」と話す。Origami Payは、iPadなどタブレットと決済アプリのみで利用できるハードルの低さが特徴。アリペイとも提携しており、観光地を訪れる外国人観光客への対応も可能になる。Origamiは1月31日、大垣共立銀行と資本業務提携し、東海地域での普及に乗り出すなど、キャッシュレスによる地方創生を目指す方針を発表している。

 先進国ではEC(Eコマース)の発達により、消費者の買い物行動が大きく変わっており、小規模店舗だけでなく、大手の小売りチェーン店の経営も圧迫されている事態だ。米国ではおもちゃ販売大手トイザラスが、AmazonなどのECに顧客を奪われて経営不振に陥り、米国事業を清算し、735店すべてを閉鎖か売却する方針を打ち出している。

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