指揮官いわく、「源(昌子)と蛍(山口)には声をかけて、翔哉(中島)がフリーと言った。リズムとスピードの変化があるので、ずっと『ショーヤ』と叫んでいた。同点はチームが諦めなかったから。それが唯一ポジティブな点だ」と中島のプレーに期待していたことを話した。

 中島はゴールにつながる前のプレーで、3人に囲まれながらも体の向きでフェイントをかけて抜き去った。もともとは左サイドからカットインによるミドルシュートを得意とするが、ポルティモネンセに移籍したことで、「ゴール前(左サイド)に飛び込むプレーも増えました」と言うように、プレーの幅を広げている。「一発回答」と断言できないのはプレー時間が30分と短かったからだ。

 ウクライナ戦では原口のスタメンが予想されるものの、中島が交代で起用されて結果を残せば、ロシア行きが近づくのは間違いない。

 対照的に残念だったのが宇佐美だ。彼の良さは相手を翻弄するドリブル突破であり、シュートだった。しかし、以前は持ちすぎによりボールを奪われ、時にはプレーが軽すぎるとの批判もあった。現在の宇佐美は球離れが早くなり、味方を使うなどプレーが堅実になった。それは成長の証でもあるが、マリ戦では逆に彼本来の良さが消えてしまった。味方を使うのもいいが、時には強引なプレーがあってもいいのではないだろうか。

 以上が、ふたりに対する評価である。

 それ以外でポジティブな評価ができるのが昌子源(鹿島)である。DFラインのリーダーとして槙野智章(浦和)や長友佑都(ガラタサライ/トルコ)に指示を出しつつ、広い視野からロングパスを出してカウンターの起点になっていた。試合開始直後は積極的なインターセプトを試みるなど、プレーの幅を確実に広げている。

 残念だったのは、前半34分に負傷リタイアした大島僚太(川崎)だ。「組み立てにしっかり関わり、前へのパスが多かったのもいいこと。テクニックでは日本でベストプレーヤーのひとりだが、いつもフィジカルに問題が起きている」とハリルホジッチ監督も珍しく個人に言及した。

 大島は代表初出場となったワールドカップ・アジア最終予選の初戦、ホームのUAE戦で2失点に絡むミス。そして昨年12月の東アジアE-1選手権の中国戦でもケガから前半途中に退いている。こうも不運が重なると、ハリルジャパンとの相性が悪いのではないかと思ってしまう。

 最後に、代表初スタメンの宇賀神友弥(浦和)に関しては、コメントを控えたいと思う。一番悔しい思いをしているのは、宇賀神自身に他ならないからだ。(文・六川亨)