山崎直子(やまざき・なおこ)/1970年、千葉県生まれ。東京大学工学部航空学科卒、同大大学院航空宇宙工学専攻修士課程修了後、NASDA(現JAXA)勤務。99年、宇宙飛行士候補に選ばれ、2010年、スペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗、国際宇宙ステーションに10日間滞在。11年、JAXA退職。2児の母(写真・慎 芝賢)
山崎直子(やまざき・なおこ)/1970年、千葉県生まれ。東京大学工学部航空学科卒、同大大学院航空宇宙工学専攻修士課程修了後、NASDA(現JAXA)勤務。99年、宇宙飛行士候補に選ばれ、2010年、スペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗、国際宇宙ステーションに10日間滞在。11年、JAXA退職。2児の母(写真・慎 芝賢)

 宇宙飛行士の山崎直子さんにとって、夢をかなえるための第一歩となったのが、東京大学理科一類合格だった。現在発売中の「駿台予備学校 by AERA」(朝日新聞出版)では、学問の世界に触れて衝撃を受けたという高校時代を振り返っている。

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 日本で2人目の女性宇宙飛行士、そして2児の母でもある山崎直子さんが、駿台予備学校に通い始めたのは高校3年の春だった。

 駿台を選んだ理由を聞くと「友人が通っていたこと、通学電車の乗り換えの途中に校舎があったこと。そんな単純な理由でした」と笑う。けれど、受講してすぐに気がついたそうだ。「駿台での勉強は、高校の勉強とは違う」と。

 まず衝撃を受けたのは、当時からカリスマ数学講師として知られていた秋山仁先生の授業だった。

「外見も教え方も個性的でした。たとえば、学校の数学では『平行線は交わらない』と習いますが、『非ユークリッド幾何学の世界で平行線は交わる可能性がある』など、知らない世界についても話してくれました」

 つまらない勉強でも歯を食いしばってやり遂げるのが受験勉強……そんなイメージを抱いていた高校生が、「受験勉強を通して、学問の世界の扉を開け、その本質や真理を学んでいるのだ」と気づかされた。山崎さんは、新しい世界との出合いに胸をときめかせた。

 同じような驚きと感動は、小論文の授業でも味わった。

「小論文は、それまで書いてきた『作文』とは全然違うものでした。まず自分の主張があり、裏付ける根拠を書き、最終的な結論を強化していく。何かを主張したいときには、思いを語るだけではダメだ、論理性が重要なのだと初めて知りました。この手法は、宇宙飛行士採用試験はもちろん、社会人になってからの人生の大事な局面でも役に立っています」

■人生を変える出会いがあった

 駿台の夏期・冬期・春期の講習に加え、高校3年で週2日、高校生クラスの授業を受けるようになった。目指したのは宇宙について学べる学科がある、東京大学理科一類だ。

「不安はありましたが、『駿台の受験ノウハウがあれば大丈夫かな』という安心感もありました」

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山崎さんが重視した、駿台のある“取り組み”とは