「見た目は立派な体格なのに強く振れない(強くボールを叩けない)選手が多いんですよ。強いチームでもしっかり振り切っているのは大阪桐蔭と履正社(いずれも大阪)くらいじゃないですか? 具体的に言うと下半身を“絞る”動きがない。テイクバックで下半身をしっかり絞ってひねる動きがなくて、(バットを持つ手の)前後の動きしかないから、速いボールを強く引っ張れないんですよ。とにかく空振りしない、バットに当てる、進塁打を打つ、そういう『ケースバッティング』を求めすぎるからだと思うんですよね。(カウントが)追い込まれたら仕方ないとは思いますけど、初球でもそんなバッティングしかできない選手が多いです。体の感覚として下半身を絞る、ひねるということを覚えさせないと強く振れないですよ」

 自身の経験、そして多くの選手を指導してきた中でもバットをとにかく強く振るということは極めて重要だと感じていたそうだ。バットを振れない状態に陥った選手に対しては、まずバットを振らざるを得ない状況を作ることで改善を図ったという。

「どんな選手でも調子が悪くなるとバットを強く振れなくなる。自分もそうでした。分かっていてもバットが出ないんですね。でもそこで思い切り振れるかどうかで変わってくると思います。だから、自分が二軍監督の時は調子の悪い選手にはよくエンドランのサインを出していました。そうすればまずバットは振りますから。そうすると、次の打席でも振れるようになるんですね。それくらいまずバットを強く振るということは大事だと思いますね。あと感じたことは右投左打の選手が多い。それで高校の監督に『わざと左打ちにさせているの?』って聞くと、小中学生の時にもう変えているって言うんですよ。それで強く振ることを教えられずに、チョコンと当てるようなスイングをしている。最近左ピッチャーが多いから少し変わってきましたけど、一時は本当にそういう選手が多かったです」

 豊かな才能ある選手の芽を摘まないためにも、また日本の野球界全体がレベルアップするためにも育成年代の指導、環境というのはやはり極めて重要なことである。先日も筒香嘉智(DeNA)が少年野球の世代に対して提言して話題となっていたが、八重樫氏にも指導者と保護者に対して求めたいことを聞いてみた。

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親が目の色を変えてやるのは、子どもに良くない