そんな加藤さんが、このたびTOEICの歌を作った。学習者に、「使える英語力を身に着けてもらいたい」と強く思っているからだ。本来、TOEICのスコアを上げる目的は、実際の英語運用力を高めること。そこをないがしろにしては、何のために英語を教えているのかわからない。

 教室でも、TOEICの「使える」フレーズは、音読してもらったり、使用実例を示したりして、生きた英語を伝えている。

 加藤さんは、「この歌は、聴いてもらえれば勿論TOEICスコアも上がる歌なのですが、同時に『使える英語』のトレーニングになっているのです」とまっすぐに言う。

 歌い出しは、Should you have any questions please don't hesitate to call me.「何かご質問がありましたら、ご遠慮なく私にお電話ください」という言葉から始まる。これはTOEICテストのパート7(読解問題)で頻出の表現で、ビジネスメールの結びの言葉としても定番だ。

 しかし頻出表現でありながら、受験英語にしか触れていないと意味がとりにくいかもしれない。Should you have any questionsは、If you should have any questions(ここでのshouldは「万が一」の意)の省略変化形。don't hesitateは「ためらわないで」の意味である。

 TOEICファン(驚くかもしれないが、年間のべ200万人が受験するTOEICには、数多くの学習ファンがついている)の間で必ず笑いが起こるのは、1番の歌詞中にあるas well as complimentary refreshments「無料の軽食も」という部分。パート7の頻出表現だが、受験英語しかやっていないと、complimentary、「無料の」という単語がわからないかもしれない。ネイティブライクな音とリズムにも引き込まれる。

 また、1番のAs space is limited please sign up well in advance「席に限りがありますので、十分余裕をもってお申し込みください」という表現のwell in advanceのwellは、パート5(文法・語彙)の穴埋め問題でよく狙われる。

 2番のinclement weather「悪天候」は日常会話では使わない硬い表現だが、ビジネス英語のTOEICテストではお馴染みの語句だ。

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この歌がスコアアップにつながる理由とは?