「I want to talk with you.」(私はあなたと話がしたい)

「We are talking now.」(今、していますよ)

「There is a cafe of my friend nearby. How about together?」(私の友達のお店がそこにあるので一緒にどうですか?)

「No, thank you.」(結構です)

「Oh, yes. Thank you very much. I will give you some coffee.」(そうですか。コーヒーをごちそうします)

「I don't go there.」(行きません)

「Thank you, bye.」(そうですか。さようなら)

 最後は「英語、お上手ですね」とは言ってくれなかった。こうして撃退することはできたのだが、実際、かなりしつこく食い下がられた。そんなにむげに対応しなくてもいいのではないかとの声もありそうだが、実は、このような友達のお店に連れていくという詐欺事例は珍しいものではない。この先の展開としては、いくつかパターンがある。法外な会計を請求される、別の「友達」に別の場所に連れていかれて、強制的にカードゲームに参加させられて金を請求される、お土産物屋にご案内……。枚挙にいとまがない。定番といえば定番なので、当然のことながら、私は以前からこの手口を知っていて、会話の途中から拒絶するつもりで話していたのだ。これが、押しに弱い人や、下手に英語のコミュニケーションにはまっている人だったりしたら、程度の差こそあれ被害を受けていたことだろう。できれば、英語のやりとり以上に、このような詐欺事例があることを知っておいてもらいたい。それだけでも、もし現地に行ったときに不意に話しかけられても、疑う余裕が生まれるからだ。旅先では人の親切を大事にしたいものではあるが、それと同じぐらい、相手のことを疑ってかかるのも旅を安全に終わらせることができるコツなのである。

(文/ジャーナリスト・丸山ゴンザレス、イラスト/majocco)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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